『独学大全』

ブームをけん引する『独学大全』(ダイヤモンド社、788ページ、3080円)
ブームをけん引する『独学大全』(ダイヤモンド社、788ページ、3080円)

 書店の一角に大きく平積みされる独学大全。黒いカバーに緑の帯は印象的で、何の本なのかと気になる人も多かったはずだ。本書は、教育機関や専門塾などで受動的に学ぶことに慣れてしまった人に、独学という能動的な学び方・続け方を紹介する独自性の高い1冊だ。

 55の独学技法について紹介されており、その独学の一つ一つに論文や歴史的人物の行動などの裏打ちがあり、信頼度が高い。その網羅性や読後の行動したくなる(主体的に学ぶことを今すぐでも始めたくなる)モチベーションを生んでくれる。

 著者の読書猿さんに制作の裏側を伺ったところ「本書に限らず私が書く本は、類書(同じジャンルの本)がたくさんある分野。ビジネス書としてはレッドオーシャンだったが、人文知の方法で本を書く人はいなかった。成功した個人の知名度と経験知に頼る本と、それとも人類の重ねてきたすべての知を参照した本。本が売れない時代にどちらが支持されていくのか、ちょっと見ものですね」とのことだった。

 著者は、『アイデア大全』(フォレスト出版)などの大全系のヒット作の多い作家ではあったが、個人のプロフィルの詳細についてはほとんど明かされていない。成功やネームバリューで売ることの多かったビジネス書に対するアンチテーゼともいえる1冊だ。

 本書の編集者 に話を伺うと「独学大全に限らず、ウェブで検索できない≒本でしか読めないことが価値となる」と分析している。分厚い書籍群の多くは網羅性が高く、学問知識的な裏打ちがあると読者は感じるのだろう。そういった情報は実はコンテンツ過剰かつ粗製乱造なWebで探すことは難しい。非常に網羅性と書籍としての付加価値の高い1冊。このレベルのものを期待してしまうと世のビジネス書の8割は不合格になってしまうのではないだろうか。

よくもここまで集めた『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、424ページ、2585円)
『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、424ページ、2585円)

 2021年のビジネス書売り上げトップ3に入ることがほぼ間違いない書籍が『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』だ。20年末から加速度的にヒットし現在28万部を記録。各書店でプッシュされており、現に丸善丸の内本店でも入り口を入ってすぐにこの本が目に入る。

 そんな本書を一言で表すのであれば、「大人のための仕事の教科書」である。雑誌『致知』に掲載された膨大かつ1万本以上のインタビュー群から名言や名エピソードを紹介している。稲盛和夫氏、王貞治氏、山中伸弥氏、佐藤可士和氏など、ジャンルレスな人々がピックアップされており、働く読者にグッとくる内容だ。それが怒濤(どとう)の365連続と来ている訳だから、心に染みない訳がない。過去にもこういった著名人をひとまとめにした本はあったが、ここまでヒットした本は記憶にない。おそらく、網羅性の高さと著名人の熱量の高さが本書にあるからだろう。

 ヒットの理由には、読者の読書時間を問わない設計である点に触れておきたい。

 1人あたり1ページで簡潔にまとまっており、サッと読んで次は後で読むということも、一気に読むことも可能。また、読みたい著名人だけピックアップして読んでも罪悪感がない立て付けだ。

 これでもかという程に詰め込まれたエピソード群ではあるが、もともとは500を超える中から本書に合う形に厳選してまとめられたものだそう。こうした1冊あたりの読み応えの高さは、費用対効果で考えれば非常に安い1冊である。労働環境がめまぐるしく変化し、一般的なロールモデルを確立しにくい現代。だからこそ情熱的に働いていたあのときの感情がわき上がる1冊というのは本当に価値がある。

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