メタトレンドは追いつくものか、つくり出すものか

 ラッシュはこれまで多くの企業の模範とも呼べるほどSNSを活用してきた。ある意味で同社のこの決定は、顧客接点を自ら切り、売り上げを減少させる行為だ。だが、そうであるにもかかわらず、メタトレンドを読み、それへの対応を実践した。

 ラッシュ創設者のマーク・コンスタンティンは「SNS利用時に私たちが危険にさらされているという証拠が数多く明らかになっています。私は自分のお客様をこのような環境にさらしたくありません。今こそ行動を起こすべき時が来たのです」と語っている。これをきっかけに、今後ラッシュに続く企業が出る可能性もある。そうなれば、ラッシュは「企業ブランディングのためにSNSを進めるべきだ」といったこれまでの流れに逆行したメタトレンドをつくり出すことになるかもしれない。

 世界的に見ると、このように経営の価値基準を見直す企業は今後増えるだろう。日本企業も、ラッシュなどを参考に、経済的価値優先の資本主義から、社会的な共感を中核においた資本主義への移行を意識すべき時機が来ているように思われる。

 ラッシュがSNSから撤退したのと、ほぼ同時期にフェイスブックは社名をメタに変更すると発表。個人情報の流出、そして自社のSNS(交流サイト)への疑念に対して背水の陣を迫られた同社は今後、メタトレンドにどう対応していくのか。その動向が注目されている。

(文=萬代悦子)

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