STEM教育はどこまで有益なのだろうか

 今後10~20年で現在ある仕事の半数がAI(人工知能)に取って代わられるという予測さえある中、子供たちは何を学び、どのようなスキルを身に付ければよいのだろうか。

 数字や科学に強い、コンピューターを操れる、プログラミングができる――。そのようなことがSTEM教育なのだとしたら、そうしたスキルを身に付けたとしても、近い将来、Alが台頭しビッグデータを基に多くのことが判断されるようになったら、果たしてそうしたスキルは有益性があるのだろうか。

 先に挙げた、総合科学技術・イノベーション会議で求められているような、「即戦力・稼げる仕事ができる人材」を育てる教育システムをSTEM教育だと考えがちだ。だが、それは間違っている。

 STEM教育の根底には、自発性や創造性、問題解決力といった能力を高めるという意図がある。人間本来の強みは、創造性、クリエーティビティーに代表されるような非認知能力だ。「こんなことができたらおもしろいかも」「あんなことができたらすごい」と、ふとした瞬間にゼロから思いつけるのは人間特有の能力。この思いつきを現実化させる想像力こそが、最終的に社会に有益性をもたらす力なのだ。そんな想像力を育む教育とは、すぐに収益を生むことのない人文学系の学問だったりする。

 一部の教育の現場では、「今使われているプログラミング言語を学ぶ」「発想や環境変化適応性の育成より、仕事の前段階としてのスキル提供の場をつくる」ことを目指している。そういった教育は、短期的には評価される人材を輩出できるだろうが、人生100年時代に生きる人材になり得るのだろうか。

 広く深い思考力は、誰も思いつかないような創造性でいかなる難題にも立ち向かえる問題解決力につながる。そのような力は容易にAIに取って代わられるものではないはずだ。STEM教育を「稼げる教育」だと履き違えずに、新たに必要な教育方法と見定めて、「今必要な能力」と「変化に適応する力」の両面を取り入れていくべきではないだろうか。

(文=萬代悦子)

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