STEM教育はビッグビジネスに

 前置きが長くなったが、今回取り上げる「STEM教育」とは何かということを簡単に説明しよう。Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の4つの学問領域の頭文字を取った言葉だ。もともとは、「SMET」とよばれていたが、01年に「STEM」に変更。米国ではバラク・オバマ政権時代に国主導で推進され、在任中の15年に「STEM教育法」が成立。STEMにコンピューターサイエンスを含めることが明示された。

 IT人材やAI(人工知能)を研究する人材が求められる中、これらの分野を学び精通した人材は、現在の産業構造の中では引く手あまただ。国の経済発展に寄与するだけでなく、個人も高収入を得る可能性が高まる。

 STEM教育として日本で最も身近な例といえば、小学校で必修化されたプログラミング教育といえるだろう。しかし、ニーズの高い教育システムながら、多くの政府がカリキュラムにSTEMスキルを組み込むことに苦労しているのも事実だ。

 シンガポールを拠点として20年に設立されたスタートアップ企業「Doyobi(ドヨービ)」は、教育者がSTEM科目(科学・技術・工学・数学)を教えるために利用できるプラットフォームだ。このプラットフォームには、教師向けのトレーニングや生徒のためのインタラクティブなコンテンツが含まれており、現在は東南アジア、中東、アフリカの10カ国以上で約2000人の教師に利用されている。21年10月、同社は280万ドル(約3億2000万円)の資金調達を発表し、STEM教育ビジネスに対する経済界からの注目度を証明した。

 日本では19年を皮切りに「STEM教育EXPO」という大々的な教育総合展示会が関西、関東で開かれており、22年も開催が予定されている。日本全国の教育委員会をはじめ、有名私立校、有名大学の関係者が来場しており、遠隔教育やタブレット導入などと同じく、関心の高さをうかがい知ることができる。

化学実験塾やプログラミング教室など学校外での活動でSTEM教育を受ける場も増えつつある。中でも、玩具のLEGO(レゴ)ブロックやゲームのMinecraft(マインクラフト)などが人気だ(写真:PIXTA)
化学実験塾やプログラミング教室など学校外での活動でSTEM教育を受ける場も増えつつある。中でも、玩具のLEGO(レゴ)ブロックやゲームのMinecraft(マインクラフト)などが人気だ(写真:PIXTA)

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