M&A(合併・買収)は今や企業成長の一つの柱となっている。M&Aの立役者としては大手投資銀行が注目されるが、小規模かつ専門性の高い「ブティック型投資銀行」も活躍の場を広げている。中には、大手の投資銀行との人材獲得競争に打ち勝つため、新卒のジュニアバンカーに2200万円もの報酬を支払うところさえ登場している。

(写真:PIXTA)
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 M&A(合併・買収)は企業の成長を支える手法の一つだ。こう言うと、失敗事例を挙げて「日本企業はM&Aが下手」という反論を受けるかもしれない。しかし、事業買収や合併を通して事業領域や活動エリアを拡大するとともに、合理化によってコストを削減して企業価値を高めるのは正しいことだろう。特に日本では少子高齢化による国内市場の縮小もあり、企業の成長にM&Aの重要性が高まっている。

 こうしたM&Aを支えるのが投資銀行だ。投資銀行はM&Aの企画から調査、実行までをサポートする。そんな投資銀行として真っ先にイメージされるのは、米ゴールドマン・サックスや米JPモルガン・チェースなど国際的な投資銀行グループだろう。日本では野村証券やみずほ証券などの投資銀行部門が国内外のM&A活動を支えている。一方で、これら大手の投資銀行ではない、小規模の「ブティック型投資銀行」を知っている読者はどれだけいるだろうか?

専門家集団「ブティック型」投資銀行

 「ブティック(boutique)」とは、小規模専門店を意味するフランス語だ。日本でも一般的には小規模の衣料品店というイメージを持つ人が多いだろう。ブティック型投資銀行は、一般的には「専門領域を持つ投資銀行」として語られることが多い。その多くが大手金融グループには属しておらず、主に小規模から中規模のM&A案件を手がけている。

 だが、それだけでは彼らの特徴を説明しきれていない。ブティック型投資銀行の強みは、大手投資銀行がカバーできていない領域や機能を担当する投資銀行の専門家集団であることだ。基本は小規模な事業体だが、中には、米ラザードフレール、米エバーコア、米グッゲンハイム・パートナーズといった「大手」ブティック型投資銀行も存在する。

日本にもある「ブティック型」M&Aアドバイザー

 日本にも、M&A業務を行うブティック型の企業が複数存在する。例えば、中堅中小企業を対象とした日本M&AセンターやM&Aキャピタルパートナーズはそうした企業だ。さまざまな媒体で企画される年収ランキングで上位に位置することの多い「高給企業」としても知られている。彼らの業務は、M&Aの仲介業務が中心だ。主に中小企業同士の買収案件を掘り当て、実現させることで手数料を獲得している。彼らは銀行とは違った立ち位置で独自のサービスを提供している。また、近年では後継者不足に悩む企業の継承買収・譲渡にも力を入れている。

 このほかM&A助言の領域では、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリーや、PwCアドバイザリー、KPMG FASなどの会計事務所型のM&A助言サービス企業が著名だ。これらの助言サービス事業者は、企業価値の評価や買収対象企業の事業リスク、財務状況の調査(デューデリジェンス)に関して、監査法人ならではの視点からサービスを提供。また、同じグループのコンサルティング部隊と協力し、M&A後の統合プロセス(ポスト・マージャー・インテグレーション、PMI)や事業戦略立案といった、銀行業務とは別軸でのサービスを展開している。このほか独立型のM&Aアドバイザーとしては、フロンティア・マネジメントや経営共創基盤といった企業も存在する。

大手の投資銀行「バルジ・ブラケット」に対抗

 一方、大手の投資銀行は「バルジ・ブラケット銀行(Bulge Bracket Bank)」と呼ばれている。バルジ・ブラケット(上部に張り出した部分の意)の由来は、買収案件などを取りまとめた内容を新聞などに掲載する「墓石広告」(米国で見られる縦長で上部が丸みを帯びている墓石状だったため名付けられた)の上部に、貢献度の高い大手銀行(ブックランナー)が記載されていたことに由来している。

バルジ・ブラケットは、墓石に似た形の新聞広告に投資銀行の実績を宣伝する内容を記載していたことに由来する(写真:PIXTA)
バルジ・ブラケットは、墓石に似た形の新聞広告に投資銀行の実績を宣伝する内容を記載していたことに由来する(写真:PIXTA)

 バルジ・ブラケット銀行を軍隊に例えるならば、大規模な軍団といったところだ。提供する銀行機能は多岐にわたる。例えば、債券や株式、為替といった資産の取引を仲介する「セールス&トレーディング」、機関投資家向けの調査分析サービスを提供する「リサーチ」、そしてM&Aや資金調達などを行う「コーポレートファイナンス」などが挙げられる。

 さらに、個人客に対する銀行サービスを提供する「商業銀行部門」や、資産の運用を担う「アセットマネジメント部門」を保有していることも多い。そして、世界各国に支店や支社、現地法人を持ち、国境を越えて行われる包括的な金融サービスを提供している。

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