コロナ禍で生活様式は一変した。中でも大きな影響を受けたのは仕事の仕方ではないだろうか。リモートワークが広がり、また同時期に「ワーケーション」という言葉も急浮上してきた。しかし、ワーケーションが浸透するには、いくつもの課題が存在する。

 「ワーケーション」という言葉を聞いたことはあるだろう。ワーク(仕事)とバケーション(休暇)を合わせた造語だ。ワークしながらバケーションをとるかのように、リゾート地や温泉地でリモートワークすることを指す。新型コロナウイルスの感染拡大を契機にテレビや雑誌などでも取り上げられるようになった。コロナ禍で苦しむホテル業界ではワーケーションへ対応するところも出てきた。だが、ワーケーションが広く浸透するには、いくつもの課題がある。

言葉自体は2000年代後半から存在している

 実はワーケーションという言葉は新型コロナが流行するずっと前から存在していた。この言葉がいつごろ誕生したかは、はっきりしないものの、2000年からの10年間の後半ごろにはインターネット上で「Workation」という言葉が使われていることが確認できる。しかし、言葉自体が市民権を得たのは20年に入ってからだ。それまでは単なる造語として一部の人間が使うにとどまっていた。

 コロナ禍以前、日本では聞いたことがない人が大半だったが、20年7月に日本政府が「Go To」キャンペーンと共に、ワーケーションの普及に取り組み始めたころから広く認知されるようになった。観光地の経済復興や地方の活性化も期待できるため、多くの地方自治体でワーケーションを実施する企業や個人に対して補助金を出している。

 ワーケーションの定義は、観光地やホテルなどでリモートワークをしながら休暇も楽しむこと。リモートワークといえば、自宅やレンタルオフィスなどで仕事をするイメージだろう。もっとも、リモートワークはオフィスではない場所で仕事をすることの総称なので、ワーケーションはリモートワークの一種ともいえる。「遊びやリフレッシュのために訪れていた観光地に滞在しながら仕事ができるなんて素晴らしい!」と思う人もいるかもしれない。だが、当然ながらメリットもあれば、課題も多くある。

ワーケーションは仕事のパフォーマンスを向上させる

 20年、NTTデータ経営研究所(東京・千代田)、JTB、日本航空が合同である研究調査を実施した。沖縄県のリゾート施設でワーケーションする18人の男女を対象にしたものだ。対象となった男女にリストバンド型の計測器を常時装着し、活動量や睡眠時間などの行動データを収集した。また、ワーケーション中とその前後に仕事に対するWEBアンケートを実施した。

  この結果、ワーケーションは従業員の生産性と心身の健康にポジティブな効果があることが分かった。仕事のパフォーマンスがワーケーション前と比べて20%程度上がっただけでなく、終了後も5日間は効果が持続した。また、心身のストレスも参加前と比べて37%程度低減したとの結果が出た。これまでオフィスこそが最適な働き場所とされてきたが、ワーケーションでも仕事のパフォーマンスを高められる可能性があることを示した。

 従業員にとってはメリットが大きいワーケーションだが、企業側から見るとどうだろうか。確かに仕事のパフォーマンスが向上したり、働く人のストレスが低減したりするメリットはある。しかし、ワーケーションの導入にはリモートワーク全般に共通した問題がある。

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