全国でワクチン接種が進む中、コロナ禍後の経済を見据えた活動が模索され始めている。変異型ウイルスの登場などで、今後の動向は予断を許さない状況だが、抑圧された消費欲求は解放を待ちわびている。そんな状況で注目されているのが「リベンジ消費」だ。

 リベンジには仕返しという意味がありネガティブなイメージがある。リベンジは昔からある言葉だが、今季限りでの引退を表明した埼玉西武ライオンズの松坂大輔投手が広めた言葉でもある。1999年の新語・流行語大賞にも選ばれたこの「リベンジ」と、「消費」の組み合わさったリベンジ消費という造語は、コロナ禍が収束すれば、新たな流行語になるかもしれない。

ワクチン接種後に消費が増えるのか

 2020年2月以降、日本の消費は一気に落ち込んだ。日本銀行が発表している個人消費の指標「消費活動指数(実質)」は、20年第2四半期に84.3(15年=100)、21年第2四半期に91.0となるなど、コロナ禍前の19年第4四半期の99.1に比べ大きく落ち込んでいる。

 緊急事態宣言やまん延防止等重点措置による店舗休業や不要不急の外出・移動自粛要請で、個人が活動的に何かを消費するという状況にはない。

 それでも20年中は「コロナが収束したら○○しましょう」という思いがあった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が21年になっても断続的に続き、コロナ以前の生活を思い出せないような状況に陥っている。その一方でワクチン接種は進んでおり、経済変化を見据えた準備をする企業も現れ始めた。

 そうした中、登場したのが「リベンジ消費」だ。ストレス解消という意味と、コロナによって急減してしまったエンターテインメント消費や旅行などの再復活を期待する意味合いがある。抑制されていた消費意欲が爆発することが期待されているのだ。

リベンジ消費での復活を期待する産業とは

20年は休止したFUJI ROCK FESTIVALも21年には再開された(写真はイメージ、写真:PIXTA)
20年は休止したFUJI ROCK FESTIVALも21年には再開された(写真はイメージ、写真:PIXTA)

 多くの産業がリベンジ消費を期待している。中でもエンタメ産業の音楽業界の期待は大きい。

 音楽産業は1998年をピークに音楽CDの売り上げが低下。今ではサブスクリプション(定額課金)型やダウンロード型など多様な楽しみ方があるが、収入源はここ20年で変化しライブ活動が稼ぎ頭となっている。ライブではチケット代、グッズ代、ファンクラブ加入(チケット優先購入権など)など売り上げに寄与するチャンスが多い。100万人のファンに1000円のCDを購入してもらうモデルは、1万人のファンにライブを通じて10万円を消費してもらうモデルへと変化している。

 緊急事態宣言を経験して、大手アーティストはこぞってオンラインライブに参入した。しかし、現時点では目新しさもなくなり、緊急事態宣言下でもフェスやライブを開催するケースも出てきている。だが、緊急事態宣言下で20年8月末に強行開催された「NAMIMONOGATARI 2021」のように、クラスター発生のきっかけになってしまった事例もある。

 エンタメ産業では、1日も早くリアルなライブを開催したいという思いが強い。楽曲(シングル)のネット配信やメディアでの露出ピークをライブの開催に合わせ、数年単位で粛々と準備をしてきたアーティストも多い。ただ、変異型ウイルスの登場で、感染の拡大スピードや広がりが読みにくくなっている。もし緊急事態宣言の延長など、状況の変化で急にライブを中止しなくてはならなくなった場合、アーティストや興行サイドは投資回収が難しくなる。

 このため、ライブを中止するリスクを取りつつ、ギャンブルに近い勝負に出るアーティストもいる。また、小規模なライブ会場を数多くこなしてきたアーティストの多くが、より広い中規模会場でライブを開催して、ライブの回数を減らす傾向も出てきた。その結果、そうした会場を取り合う事態も起きている。だが、この方法は観客にこれまでよりも長距離の移動をさせるリスクを生んでしまう。

 このように様々な課題を抱えている音楽業界だが、アーティストとライブなどで直接つながる機会が減ったファンたちのフラストレーションはたまっている。それらを発散するリベンジ消費を望んでいる関係者は多い。

続きを読む 2/2 悲鳴を上げる業界はリベンジ消費に望みをつなぐ

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