あなたは「投げ銭」をしたことがあるだろうか? ネットでライブ配信する動画配信者にリアルタイムで「お金」を提供し応援するものだ。また、プロジェクトを開始したい企業や個人が、必要な資金を募集する「クラウドファンディング」も活用されるようになってきた。いずれも「応援経済」と呼ばれる活動だ。ファンがこれまでにはなかった方法で、個人や企業を直接支援する手法が徐々に拡大しつつある。

 投げ銭などに代表される「応援経済」はここ数年で誕生した比較的新しい概念だ。明確な定義は存在しないが個人や小規模組織などが個人から「お金による応援」を受ける仕組みのことを指す。

 音楽や演劇などの分野では、ファンが公演チケットやCD、ブルーレイ・ディスク(BD)などを購入し、アーティストや公演者を支えている。それ以外の方法で、金銭的な応援をするには、ファンクラブに加入したり、関連商品を購入したりすることになる。ただし、こうした支援はクリエーターやアーティストなどが芸能事務所に所属したり、販売ルートを確保してくれる企業などからバックアップを受けたりしない限り困難だった。

 そうした中、テクノロジーの進歩によって応援経済を支える仕組みがネット上に登場。クリエーターやアーティストに対する資金援助のハードルが低くなり、ライブ配信の際にファンが直接金銭的な「応援」をすることが容易になった。

 応援経済における成功の鍵は、「いかにファン(支援者)を取り込めるか」にかかっている。物品やサービスの提供だけではなく、支援者の「応援したい」という気持ちを駆り立てることが大事になる。ファン一人ひとりの支援額は大きくなくても、支援者の裾野が拡がり、人数が増えることで獲得する金額を大きくすることができる。

 通常、動画のライブ配信では視聴者が好きなだけの金額を支援するが、1度の配信で数十万円もの投げ銭を獲得するクリエーターやアーティストも存在する。YouTubeの投げ銭機能「スーパーチャット(スパチャ)」における2020年の累積投げ銭金額ランキングでは上位を日本人が占めた。このとき第1位となった、バーチャルYouTuber「桐生ココ」(21年7月に活動を休止)は年間1億5000万円もの投げ銭を獲得している。

 いくつかのネットサービスで提供されている投げ銭機能だが、17年に始まったYouTubeのスパチャの存在は大きい。Twitterも21年から投げ銭機能「Tip Jar」を英語圏ユーザー向けに導入し始めた。今後、個人の情報発信や相互コミュニケーション技術が進歩すれば、応援経済に関連した新たな機能が登場することも考えられる。

広告収入に依存していたYouTuberも投げ銭という新たなマネタイズ手段を積極的に活用している。大量の再生数がなくても、少数のホットなファンがいればビジネスとして成り立つようになった(写真:PIXTA)
広告収入に依存していたYouTuberも投げ銭という新たなマネタイズ手段を積極的に活用している。大量の再生数がなくても、少数のホットなファンがいればビジネスとして成り立つようになった(写真:PIXTA)

クラウドファンディングも応援経済の一種

 投げ銭と並んで、よく目にするようになった「クラウドファンディング」も応援経済の一種だ。クラウドファンディングは、プロジェクトを開始したい企業や個人が、必要な資金をネット上で募集。一般に、資金提供の見返りに自社サービスやプロジェクトの成果物を「リターン」として提供する。事業者側からすれば、製品の完成前から資金を得たり、アイデアの段階からプロジェクトをスタートさせたりすることも可能となった。

 クラウドファンディングではリターンに対する魅力から資金を拠出する人も多いが、提案者を応援したいという気持ちから資金提供する人も少なくない。そのため、クラウドファンディングでは、動画やブログなどのコンテンツで支援者の応援意欲を高めるよう趣向を凝らしている。

続きを読む 2/2 つながりやすさが「炎上」を招く結果に

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