ゴーストキッチンといっても幽霊がでるいわくつきのレストランではない。デリバリー顧客をターゲットにした新たな飲食店の形である。なぜここまで一気に広まったのか、その人気と裏側、そして本レストランの成り立ちや問題点について解説する。

(写真:PIXTA)

座席のないレストラン

 ゴーストキッチンは、米国発祥のビジネススタイルだ。現地ではクラウドキッチンやバーチャルレストランなど呼び方は様々。ニューヨークをはじめとする都市部の賃料は非常に高く、キッチンと座席の両方を備えるための設備投資以上に維持費がかさんでしまう。

 ゴーストキッチンの店舗は、調理をするキッチン部分のみあればよい。デリバリーや持ち帰りをする顧客のみをターゲットにしたモデルで、現在マーケット規模が拡大中だ。

 米国ではUber EatsやDoor Dashなどの人気向上に合わせて多くのゴーストキッチンが生まれた。また、家で料理を作るのではなく、配達需要が多いという下地があったことや参入障壁が低いことから、多くの業者が参入。コロナによる店内飲食の冷え込みに、反比例するように伸びているホットなジャンルと言えるだろう。

なぜゴーストキッチンが台頭しているのか

 ゴーストキッチンがビジネス的に優れているポイントは3点ある。

 1つ目は、「調理のみに特化」していること。そのため、設備としてはキッチンさえあれば開業可能だ。接客や人の呼び込みなどの宣伝は不要。デリバリーサービスに登録するだけで今なら自然と顧客がやってくる。雰囲気のよい家具や店内BGMも、小じゃれたユニホームも、おしゃれな什器(じゅうき)も不要。初期投資も低く、キッチンと食材、あと料理人がいればビジネスが成り立つ。

 2つ目は、「地代が安くできる」ということ。通常飲食店は、駅近くや人が集まる場所に集中する。接触機会が増えれば来店客が増えるため一等地は奪い合いだ。逆に、人が集まらない場所は地代が安くなる。ゴーストキッチンは、このコストが大幅に削減可能。たとえ住宅地であったとしても、配達員が都度料理を受け取りに来てくれるため売り上げはさほど変わらない。

 雑居ビルの居抜き物件や、普通レストランが展開できない場所にこそゴーストキッチンの導入に活路がある。

(写真:PIXTA)

 3つ目は、「1つの店舗で複数ジャンルのレストランが展開可能」という点だ。配達型の店舗はすしやそば、ピザなどの分野で昔から存在した。しかし、ゴーストキッチンが特殊なのは、1つのキッチンで複数の店舗を運営しているレストランが多いことだろう。左のコンロではイタリアンを、右のコンロでは中国料理を同時に作る。一般のファミレスや食堂であれば和洋中の料理を隣同士のコンロで調理することもあるだろう。だが、そういった店舗はあくまで店頭やメニューをみれば多くの商品を取り扱うレストランだとわかる。

 専門店という看板を出している店では普通は見られない調理法だ。中には、1つの調理場で20店舗分のゴーストキッチンを運営している場合もある。注文者は店舗に出向くことがないため、この現状を知られることはない。たとえシェフが5分前にカレーをつくっていても、手元に届くのはオーダーした和食だけだ。

続きを読む 2/2 そのゴーストキッチンは専門店ではありません

この記事はシリーズ「仕事をアップデートするビジネスキーワード・トレンドワード」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。