そのゴーストキッチンは専門店ではありません

 コロナ禍によって、家で食事をする需要は極端に増加した。そのため、今後もゴーストキッチンは増加するだろう。ただ、顕在化している問題として専門店でないのに専門店のフリをして営業するゴーストキッチンが多い。もう少し厳しい表現をすれば、おいしそうな画像だけ用意し、実際は説明がないままに冷凍食品を温めただけのものが届くことがある、ということだ。そういった店は「○○の専門店」や「■■料理のアワード獲得」など聞こえのよいコピーが並び立てており、そうした手法をとらない正直者のゴーストキッチンだけが損をする展開となっている

 顧客は、その店に価格に見合う味や試行錯誤してきた歴史、専門店としてのプライドというものを求めている。一方、ゴーストキッチンはいかに効率的に、複数ジャンルの調理を行い配達アプリ上で接触機会を増やすかという点に終始している。

 その背景には、ゴーストキッチンの設営支援や、商品を解凍するだけでゴーストキッチンが始められるスターターキットの販売を商売としている業種も存在することが大きい。金の延べ棒ではなく、つるはしを売るといったところだろうか。必ずしも調理した料理が、解凍した味を上回るとは限らない。だが、専門店の看板を掲げながら、実態は効率的に商品を温める専門家にすぎないというのはいささか残念な気持ちになるはずだ。

 デリバリーアプリ側も料理の評価や通報機能などを備えている。ただ、食べログやRettyなどで評価が確認できるのは、一部の店舗に限られている。大多数のゴーストキッチンはページを作成されていないこともあり、ユーザー側が初回に購入する際にはギャンブルに近い状態だ。きれいな商品画像だけを見て、お店の調理状況や片手間調理のゴーストキッチンかどうかを見抜くことができない。しかも低評価が増えてしまったら、店舗の名前とロゴを変えて新規オープンすればいいだけのことだ。

 もちろんすべてのゴーストキッチンが怪しい商売というわけではない。現在の外食の冷え込み状況で、生存戦略としてゴーストキッチン化を進める飲食店も増加中だ。このビジネスはデリバリーアプリへ完全依存しているため、今後外食需要が復活したときや、デリバリーアプリ側の手数料増加の際に大打撃を受けるリスクもあるだろう。

 ビジネスモデルとしては、革新的とも呼べるゴーストキッチン。外食需要が低いうちに、どこまで定着するのか注視していきたい。

(執筆=宇佐美フィオナ)

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