メタバースには「ガンダムで行く」

 バンダイナムコHDは22年4月からの中期計画で、IP(Intellectual Property の略、キャラクターなどの知的財産を指す)戦略に400億円もの多額の投資を行うと発表した。とりわけ驚きを持って受け止められたのが「IPメタバース」開発に150億円を投資するという戦略だ。

 メタバースには「猫も杓子(しゃくし)も」と言っていいほど多数の企業が参入を表明している。競争が激しいレッドオーシャン市場にあえて参入する勝算はどこにあるのか。切り札になり得るのが、ガンダムやドラゴンボールのような根強い人気のIPだ。強力なIPを活用してメタバースを推進し、安定的な収益を生み出すことを目指す。

 以前からバンダイナムコHDでは、IPを活用したファン向けのグッズ開発や、ゲームやアニメなどとのメディアミックス戦略が業績を下支えしてきた。しかし今後は、このような取り組みに、メタバースを組み合わせようとしている。

(出典:バンダイナムコホールディングス)
(出典:バンダイナムコホールディングス)

 IPメタバースの第1弾として白羽の矢を立てたのが「機動戦士ガンダム」。具体的なメタバースでの展開内容については明らかにしていないが、最初から「真打ち」と言えるガンダムを使うところにバンダイナムコHDの本気度がうかがえる。

 とりわけ品薄が続くほど人気が高まっているガンプラを活用する戦略が目を引く。ガンダムメタバースではガンプラ同士が戦う「eスポーツ」の展開を視野に入れているという。

 バンダイナムコHD傘下のサンライズは、ガンプラをテーマにしたアニメシリーズを制作してきた。2013年に放映が始まった「ガンダムビルドファイターズ」を皮切りに、2017年には「ガンダムビルドファイターズ GMの逆襲」が登場。このほかにも「ガンダムビルドファイターズトライ」「ガンダムビルドダイバーズ」などを制作してきた。

 同シリーズの狙いはガンプラの販売拡大にある。いずれもバンダイが実際に販売するガンプラを改造し、仮想空間上でシミュレーションバトルをする競技「ガンプラバトル」がテーマだ。宇宙世紀を描いてきたかつてのガンダムシリーズとは異なり、ガンダムビルドシリーズでは「ガンプラ」がストーリーの中心となっている。

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