新型コロナウイルスは人々の生活習慣を大きく変えた。食事のデリバリーサービスは生活の一部として組み込まれ、消費者の外出抑制は今後も続きそうだ。手数料を払えば、外食しなくても、デリバリーで飲食店の味が楽しめるようになった。

 だが、食料品や飲料や生活雑貨がすぐに欲しい場合は、家から出て、店舗に購入しに行かなければならない。だが、それらを購入から最短10分で届けてくれるショップが東京で続々と開業しつつある。そんな流通革命とも呼べるサービスが、「ダークストア」だ。一般的な「店舗と客との対面営業」の形はとっていない。オンラインで顧客が購入した商品を届けるための配送拠点として機能する店舗のことで、実店舗と同じように商品を陳列しているが、顧客が実際にそこで買い物をすることはないためこのような名称がつけられている。

 今までAmazonフレッシュやヨドバシエクストリームなどが即日や短時間配達を実現していた。それに加え、直近ではダークストアによる1時間以内の配達が一部の地域で始まっている。そんな自宅まで短時間で商品を届けてくれるビジネスは、まだまだ日本においては主流ではない。だが、米国や欧州では人気を博しつつある。

「ダークストア」は怪しい名前だがビジネスはまっとう

 ダークストアという名前だけ見ると、何やら非合法の店舗のように感じられるかもしれない。だが、実際は一般的なBtoCサービスである。

 一言で言うならば、宅配専門のスーパーマーケットだ。利用者はスマートフォンやPCからオンライン上で商品を注文し、ダークストア側は在庫から商品をピッキングして梱包。配送担当者が注文先まで配達するといった仕組みだ。調理場のみが存在するゴーストキッチン(「話題のゴーストキッチンは何が問題か? 冷凍食品を温めた料理も」)と同じく、対面販売をなくし、別の面で強みをつくっている。

 その強みとは、購入から配達までの圧倒的な“スピード”だ。通常のECサイトの購入であれば最短でもアプリから注文確定後、当日中、ないしは翌日が最短の配達だろう。

 だが、ダークストアは配達の速さを強みとしており、注文から最短10分で到着する。ざっくりと言えば、デリバリーサービスで届くのが飲食店の料理ではなくスーパーの品物になったようなものだ。

 ダークストアのサービス拠点は住宅街に設置されている。その理由は、顧客に対してできる限りスピーディーな配達を行いたいからだ。ダークストア側は、その速さや手軽さを付加価値として顧客から配達手数料と商品の利益を得る。ユーザー側は今すぐ欲しいものが手に入るという利便性だけでなく、スーパーなどでの新型コロナの感染リスクを下げることにもつながるため、外出回数の抑制にも寄与しそうだ。

 ダークストアとゴーストキッチンとの共通点は、その立地だ。一般的な店舗であれば、人通りの多い場所であることが売り上げに直結する。商店街や駅前に店舗を構え、通行人との接触機会を増やすことを是とする。だがダークストアやゴーストキッチンは、人通りの少ない裏道やビルの地下、はたまた空中階に設置される。多様な商品を取り扱いつつも、賃料の高い場所に入居する必要がないのが特徴だ。

 また、Uber Eatsなどのデリバリーサービスと違うのが、ギグワーカー(インターネット経由で単発の仕事を請け負う人)を活用していない点だ。あくまで、日本でダークストアを展開するOniGO(オニゴー/東京・目黒)の場合は、と前置きはするが、商品のピッキングから配達までの速さを付加価値として提供しているため、自社で配達員を雇用し、受注から配達完了までのワークフローをすべて自社で賄っている。

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