今や一般的な決済手段として普及している「QRコード決済」。実は日本の技術によって生み出されたものだったが、その後、日本では廃れてしまう。しかし、中国で復活を遂げ、日本でも急速に利用が広まっている。さらにコロナ禍により普及が加速したが、コロナの収束後もその勢いは続くのか。日本では加盟店手数料の有料化が始まり、その行方が注目されている。

 今では一般的な決済方法になりつつある「QRコード決済」。ほんの数年前まではニッチな決済手段だったものの、今や店舗の大小を問わず利用できる。クレジットカードが使用できない小規模店舗でも、QRコードで決済できることを示すPOP(店頭販促)が掲げられている。急拡大を見せるQRコード決済とは一体なんなのだろうか?

QRコード決済は日本の技術によって生み出された

 QRコード決済の根幹は、「QRコード」だ。QRコードは、デンソーの一事業部(現デンソーウェーブ)から生まれた技術で、1994年に発表された。デンソーがQRコード開発に乗り出した背景には、旧来のバーコードの「容量問題」がある。

 バーコードでは、最大20文字程度の英数字しか読み取れず、コードが保持できる情報量に限界があった。そうしたバーコードの弱点を克服するために開発されたのがQRコードだ。QRコードでは、コードを2次元に処理することで、かな・漢字では約1800文字、英数字だと約4300文字、数字だけであれば約7000文字もの情報を格納できる。

 革新的なのは容量だけではない。「切り出しシンボル」と呼ばれるコードを区別する図形を3つの角に組み入れることで、読み取りを高速化。そして、コード中の黒セルと白セルの比率を工夫することで、どの角度からコードを読み取っても情報を取得できるようにしている。この結果、情報取得の効率は格段に向上した。QRは「Quick Response」を意味し、高速での処理が可能なことから名付けられているのだ。

 このQRコードは、当初トヨタ自動車の生産方式である「かんばん方式」の更なる効率化を目指して開発されたものだったが、自動車製造の領域を超えて、ウェブサイトやアプリへの誘導といったスマートフォンを用いた情報伝達の手段として普及していった。

 こうしたQRコードの技術を利用したのが「QRコード決済」だ。QRコード決済は「スマートフォンでQRコードを読み取ったり、表示したコードを読み取らせたりして支払う」というシンプルなものだ。QRコード決済方式には2種類存在ある。「MPM(店舗提示型コード決済)」方式では、決済時にスマホで店舗に掲示されているQRコードを読み込み、利用者が支払金額を入力して決済を行う。一方、「CPM(利用者提示型コード決済)」方式では、利用者のアプリにコードを表示させ、店舗のレジでそのコードを読み取ることで決済が完了する。

 前者は小規模店舗での利用が多く、後者は家電量販店やコンビニなどのチェーン店舗で一般的に使われている。ビジネスモデルもシンプルで、QRコード決済業者はアプリを含めた決済システムを提供し、クレジットカードと同じように決済金額に対する手数料を徴収する。

 QRコード決済は最近になって普及したものの、実は20年近くの歴史がある。日本においてQRコード決済が認知されるようになったきっかけは、2002年にNTTドコモが日本コカ・コーラおよび伊藤忠商事と共同で開発した「Cmode(シーモ)」の登場だった。

 CmodeはQRコード読み取り機を内蔵した自動販売機で利用できるシステム。携帯電話に表示させたQRコードを自販機に読み取らせることで、現金を投入してのチャージやQRコード決済による飲料の購入ができる。当時、画期的な決済システムとして注目を集めた。

 類似のサービスとして、コンビニで携帯料金を支払える「combien(コンビエン)」というサービスがあった。NTTドコモが提供していたもので、携帯電話にQRコードを表示させ、コンビニのレジで読み取ることで、紙の請求書がなくても料金を支払える。

 読み取った後に現金で支払う必要があるため、QRコードだけで決済が完結するわけではないが、QRコードを活用した決済システムとして画期的だった。しかし、SuicaなどのICカード型の決済方法が急速に普及したことから、QRコード決済の利用が日本で拡大することはなく、先に挙げた2つのサービスも、11年、12年にひっそりとそのサービスを終了している。

(写真:PIXTA)
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