ビジネスはヒト・モノ・カネの3つの経営資源が大事。どれが欠けてもマーケットの中での成長は見込めず、ライバル企業とは戦えない。結果、巨大な資本を持つ企業ほど有利というのは経営者でなくても理解している定説だ。しかし、この枠組みは、スモールビジネスの登場によって揺らぎつつある。単なるバズワードではない「スモールビジネス」。その存在感は、日に日に増しており、大企業ゴリアテに対しスモールビジネスはジャイアントキリングを起こすことになるのだろうか。

SNSパワーを活用するスモールビジネス

 今までビジネスモデルとして一般的ではなかったスモールビジネス。スタートアップや新規事業と区別しにくいが、「個人事業主やフリーランスなどが1人で事業を行う」のが特徴だ。メルカリなどの既存の商業プラットフォームでの事業立ち上げ、1人でサービス設計からプログラミングまで行いiPhoneアプリをリリース、SNS(交流サイト)を活用し有料メールマガジンを発行。これらはいずれもスモールビジネスの一例だ。

 これまでスモールビジネスが目指すのは、ビジネスとしては小口だが、個人から見ればそれなりの収益を得られる市場だった。だがスモールビジネスが既存の大規模市場の構造を脅かす可能性も出てきた。

 例えば、スモールビジネスの時代の花形であるYouTuber。彼らは、映像撮影、編集、広告営業など既存のタレント事務所であれば分業する作業をほぼ1人で実践するスモールビジネスだ。UUUM(ウーム、東京・港)などYouTuber専門のタレント事務所もあるが、YouTuberにとって個人で事業を展開するほうがメリットは大きい。事務所の組織やチームを使うとコストがかかるのに対し、個人ならそうしたコストを減らせ、YouTuberにとってリターンは十分大きくなるからだ。事務所からYouTuberが大量離反することがあるのもそうした理由からだろう。

 YouTuberを活用する側から見れば、特定のファン層に対して的確にアプローチできるのが魅力だ。有名タレントを活用して広くマスに向けた広告をしても、狙った特定の層に対する効果は薄い。しかし、商品を知って欲しい層に確実にアプローチでき、そのジャンルに精通したYouTuberを使えば、効率的な広告やマーケティングを期待できる。代理店の中抜きもなく、コストパフォーマンスも高い。既存のビッグビジネスをスモールビジネスが食う可能性もある。こうした例は他にもある。

ただ、スモールビジネスを取り合うYouTuber同士の戦いというのも水面下に存在している。視聴者総数が頭打ちとなると、パイの取り合いとなるのは致し方ない。過激なプレゼント戦略やリークなどもそうした戦いの一端である。(写真:PIXTA)
ただ、スモールビジネスを取り合うYouTuber同士の戦いというのも水面下に存在している。視聴者総数が頭打ちとなると、パイの取り合いとなるのは致し方ない。過激なプレゼント戦略やリークなどもそうした戦いの一端である。(写真:PIXTA)

 ファッション業界もその一つだ。戦後のアパレル業界は、多くの店舗に大量の商品を送り込み、シーズンごとに売り切るモデルを踏襲してきた。ブランドを構築し、商品価値を高めて大量販売し、利益を得る方法だ。だが、ニーズを読みを間違えると、欠品や在庫過多を起こすサステナビリティーに欠けたビジネスモデルとなる。

 一方、スモールビジネスでは個人のブランド力により商品の予約注文を受け、受注した分だけ小ロットで生産を発注し、顧客に届ける。これを短期間のサイクルで進める。こうした方法は既存のアパレルブランドでは真似しにくい。例えば、販売規模が大きくなる多店舗での販売の場合、冬の時期に夏のTシャツ予約をし、半年後に店舗で渡すといったスピード感になりがちだ。

スモールビジネスがビッグマーケットを食う日

 一般に、大企業は新規マーケットの開拓よりも消費者ニーズへの最適化に強みをもつ。一方、スモールビジネスは新規マーケットの開拓や、比較的小さい市場で高いシェアを獲得するのに向いている。

 こうしたスモールビジネスが市場で存在感を高めていけば、ビッグビジネスの屋台骨に風穴を開けることもあり得る。穴の一つ一つはビッグビジネスが力を注いで奪い返すには、小さすぎることもある。ただ、そこで手をこまぬいていると、小さな穴が増えて、気がついたときにはマーケットシェアを失うことになりかねない。

 スモールビジネスでは大量生産によって商品価格を下げることは難しいが、機動的にビジネスを展開でき、社会情勢の変化に的確に対応できる。撤退も早い。このように小回りが効き、少人数で行うスモールビジネスはある意味ビジネス本来の原点とも言える。これが既存ビジネス市場の枠組みを脅かすことになるかもしれない。

(執筆=宇佐美フィオナ)

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