フィンテックという言葉は既に広く普及している。メディアに頻繁に登場するし、ビジネス上の会話でもよく聞く言葉だ。しかし、フィンテックが具体的に何を意味するのか分かっておらず、金融(ファイナンス)と技術(テクノロジー)を掛け合わせた「新しいサービス」という漠然とした理解しかもっていない人は意外と多い。だが、ずばりフィンテックとは何かを説明するのは難しいもの。フィンテックを学ぶことはこれからの時代の変化を知る上で損はないはずだ。

フィンテックはニューワードではない

(写真:PIXTA)
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 フィンテックとは、ファイナンス(金融)とテクノロジー(技術)を掛け合わせた概念であり、固有のサービスや会社を指す言葉ではない。最新技術を用いた金融業を営む企業、ないしは金融業をテクノロジーでサポートする企業を「フィンテック企業」と形容する。

 フィンテックという言葉自体の成り立ちをひもとくと、意外なことに平成や令和に入ってからの言葉ではない。言葉の出自は明確ではないものの、1980年代には既に英語圏で使われていることが確認され、昨今の金融技術やテクノロジーの変化を紹介するトレンドワードではない。ただ、誕生からしばらくは世間に浸透することはなかった。近年になり、テクノロジーと金融の融合が再び注目されるようになってようやくフィンテックという言葉が広く知られるようになった。

 そして、昨今のフィンテックという言葉に明確な定義はない。金融業界における取り組みや慣行などにテクノロジーを応用することによって、新たな価値を生み出したり、既存のプロセスを効率化したりするプログラムやソフトウエアを想起するだろう。だが、フィンテックの領域としては、ネットワーク決済からソーシャルレンディング、ロボアドバイザーや仮想通貨(含むブロックチェーン技術)なども対象となる。

 現代社会におけるフィンテックの担い手の多くは、スタートアップ企業だ。フットワークの軽いスタートアップが金融業界の抱える問題や改善点を見いだし、テクノロジーを用いてイノベーションを起こしている。

 最も著名なフィンテック企業としては、オンライン決済サービスであるPayPal(ペイパル)が挙がるだろう。

 98年に設立された同社は、インターネットを介した送受金サービスを展開し、従来の金融機関独自のネットワークインフラを介在しない、当時としては画期的なビジネスモデルを構築した。2002年に買収され、ペイパルマフィアと呼ばれるペイパルに過去勤務していた人たちがスピンアウトして起業を行っている。

 YouTube(ユーチューブ)やLinkedIn(リンクトイン)などはその中の一部だ。また、テスラ創業者のイーロン・マスク氏はペイパルの創業者でもある。ビットコインなどに関心を寄せるのにはそうした背景があるからかもしれない。

 今話題のフィンテック企業としては、株式取引プラットフォームのRobinhood(ロビンフッド)が挙げられる。ロビンフッドは株式取引手数料の低減と直感的に操作できるユーザーインターフェースによって、投資に無関心であった若者世代をも取り込み、米国の個人向け証券取引分野においてイノベーションを起こした。ロビンフッターという資産の倍増を願う個人投資家群をつくり出した。

 インターネット決済プラットフォームであるStripe(ストライプ)は、小規模オンライン事業者やスタートアップの支払いや入金といった決済プロセスをサポートするだけでなく、収支管理から不正防止など決済に関する多機能ツールを提供した。ウェブサイトやアプリケーションへのサービスの組み込みを容易にするなど徹底的な開発者目線でのサービス展開も売りの一つとなっている。これらフィンテック企業は革新的なサービスによって産業に破壊的イノベーションを起こしている。

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