ユニコーンならぬ日本の“ポニコーン”

 日本におけるユニコーン企業の筆頭といえば少し前なら、LINEやメルカリが有名だった。だが2社とも上場したためユニコーン企業ではなくなっている。現時点では、AI(人工知能)開発のプリファードネットワークス(東京・千代田)や情報・ニュースアプリのスマートニュース(東京・渋谷)、人事労務ソフトウエアのSmartHR(東京・港)などが1000億円の評価額を超え、ユニコーン企業のカテゴリーに入っている。ただ、世界で約1000社とされるユニコーン企業のおよそ半分が米国に、約20%が中国に集中している。日本のユニコーン企業数はようやく10社ほどでしかない。

 日本でユニコーン企業が生まれにくい理由は色々あるが、その1つとして日本の上場のしやすさがあるといわれている。現在、東京証券取引所マザーズ市場といえば新興企業が上場し成長するための登竜門だ。だが、上場後さらなる成長を目指すのではなく、通称「上場ゴール」と呼ばれる上場を目的とするケースがあるのも事実だ。

 また、米国に比べ日本のVCは規模が格段に小さい。このため、ベンチャー企業の成長ステージの最終段階「レイターステージ」で巨額の出資ができるVCが少ないという問題もある。事業が軌道に乗り、安定した成長や収益化ができていても、さらなる拡大につながらないことが多い。創業前の段階である「シードステージ」や創業直後の「アーリーステージ」にある企業への投資に対する間口は広がっているものの、レイターステージ以降の企業の資金需要に対応できる日本のVCはまだ数えるほどしかない。

 22年4月に東京証券取引所は現在の市場第一部、二部、マザーズ、ジャスダックなどの市場区分が変わり、新興企業向けのマザーズは、持続的な企業価値向上の促進を目指す「グロース」市場となる。高い成長の可能性を持つ新興企業がグロース市場で成長できるかは、その前段階にあるユニコーン企業が育つ環境が整うかにもかかっている。

 評価額が大きくなったベンチャー企業が日本の投資家やVCから大規模な資金調達がしにくいという課題は今後も残りそうだ。こうしたことが日本でユニコーン企業が育たず、ポニー(小型馬)のような“ポニコーン企業”にとどまってしまう理由だと考えられている。ベンチャー企業の数が増え、VCにより多くの金が集まり、それらの資金が突出した企業に供給され、企業の時価総額がさらに拡大する。そうした好循環が望まれるところだ。

 

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