ユニコーン企業。それは、企業価値が高い未上場企業をカテゴライズするキーワードだ。もともとシリコンバレーや起業家の間でよく使われていたが、ここ数年で市民権を得るようになった。本記事ではその意味や、日本でユニコーン企業が少ない理由について解説する。
ユニコーン企業とは並外れた成長をし、なおかつ高い評価額を得ている企業のこと。大企業の卵とも呼べるフラッグシップ企業に付けられる名前だ。ユニコーン企業か否かは下記のような4つの明確な基準が存在する。
- (1)企業の評価額が10億ドル(日本円にして約1150億円以上)
- (2)創業してから10年以内
- (3)未上場である
- (4)テクノロジー企業(IT企業)である
ユニコーン企業の概念は米国の投資会社、カウボーイ・ベンチャーズの創設者であり、ベンチャーキャピタリストのアイリーン・リー氏が2013年に提唱し、多くのベンチャー企業が目標の1つとしている。
ユニコーン企業はその突出した成長力で、既存市場の破壊的創造を進め、数年で大企業と肩を並べる企業になるものもある。ちなみにユニコーンとは、フランスの小説家ギュスターヴ・フローベールの文学作品『聖アントワーヌの誘惑』に登場する額の中央に角が生えた馬に似た幻獣だ。

この概念が登場してから早10年弱、ユニコーン企業の数は急拡大している。さらに、ユニコーンにとどまらず、より高い評価額を持つ未上場企業も増えている。100億ドル(日本円にして約1兆1500億円以上)を超える「デカコーン企業」、1000億ドル以上(日本円にして約11兆5000億円以上)の「ヘクトコーン企業」と呼ばれる企業だ。
こうした企業が増加した背景には、ベンチャーキャピタル(VC)の台頭が挙げられるだろう。VCはベンチャー企業に資金を融通する代わりにその株を取得し、ベンチャー企業が大きくなり上場した後に、価格が上昇した株を売却。その差額で利益を得るのがVCのビジネスモデルの基本だ。
そして、ベンチャー企業側は、ある程度評価額が高くなった段階(「ミドルステージ」や「レイターステージ」と呼ばれる)で株式市場に上場し、さらなる成長のための資金を調達する傾向にあった(ただし、上場後に企業価値が大幅に下落する「上場後の死の谷」と呼ばれる状況に陥るリスクもある)。
これに対して、未上場であっても自己資金で成長エンジンが回り続け、上場しなくても成長を続ける企業や、上場によらない資金で大規模な設備投資を実施するなど、さらなる企業成長を狙うベンチャー企業も増えてきた。こうしたベンチャー企業側のニーズの変化と、VCへの資金流入が拡大し、より多くの資金をベンチャー企業に融通できるようようになったことが、ユニコーン企業数拡大の一因といえるだろう。
ベンチャー企業から見れば、上場以外にも資金を調達する選択肢が増え、その資金を使った事業拡大で、より高い評価を得られる。資金調達のために増資しないで済めば、株の希薄化が起きにくいため、上場のタイミングも計りやすくなる。これまでVCは自らのファンド運用の事情でベンチャー企業に上場を急がせ、それがベストなタイミングでの上場にならない場合もあったが、そうしたリスクも減らせる。
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