ちなみに蒸らさない場合でも、鍋肌のご飯は無駄にはならない。
5A おこげをこそぐ
土鍋は鍋肌におこげができていたら、そのまま木べらではがす(※6)。
5B おせんべいを作る
この状態でごく弱火にかけると、水分が抜け、だんだん茶色く、香ばしくなってくる。炊いた人の特権!
鍋肌からはがれにくい鉄鍋に残った米は超弱火で乾燥させることで、おせんべいになる。塩をぱらりと振ったり醤油をつけたりしてバリバリと音を立てて食べたい。
5C 蒸らす(ハリよりもふっくら感重視の場合※7)
フタと鍋の間にペーパータオルをはさんでそのまま約10分待つ。どの鍋でも、鍋肌に接した米に水分がまわり、おこげがはがしやすくなる。
今回、鍋炊き実験に使った鍋は6種類。炊飯専用鍋からごく普通のソースパン、鍋料理用の土鍋なども試してみたが、それぞれの鍋によってクセはあるものの、コツさえつかめればうまく炊くことができる。改めて今回使った鍋の特徴と炊飯時のクセを記しておこう。
■グループA(樹脂加工) ハリオの雪平、ティファールのソースパン■
→鍋材の厚さと熱伝導が炊飯向きではないからか、説明書通りでない火加減で炊こうとすると、ガスのSiセンサーが働いて途中で切れることがある。持ち場を離れるべからず。
■グループB(土鍋) 無印良品の土釜おこげ、普通の三島土鍋■
→基本的に土鍋はIHでは使えない。三島土鍋にはIH対応もあるが、いっそ大火力カセットコンロが吉か。さらに土鍋最大の弱点は、こまめな火加減調整への反応が鈍いこと。焦げた香りが漂ってきてから、火を弱くしても手遅れだったりする。その一方で炊飯イメージが明確になれば、一定の火加減でも上手に炊ける。
■グループC(鍋肌厚い派) ストウブ、南部ごはん釜■
→炊きたての味わいは誰もが認めるハリと噛み込んだときの味の伸び。ただし、ハリのある炊き上がりを目指すと鍋肌に米が残るので、ごく弱火でせんべいを作るか、鍋の中である程度蒸らして鍋肌の米まで軟らかくするか、狙いを明確にしたい。
ご飯の味は鍋で変わり、炊き方で変わる。ただし、水加減をきっちり守り、鍋のクセをつかみ、愛用の米を守る。浸漬2時間、沸騰まで5分、8~10分で炊き上がり。あとは好みで蒸らしの10分――。パラメーターはたったこれだけだ。以下により詳しい解説を掲載しておくので、ぜひ炊くときの参考にお使いいただきたい。
※1 米と浸漬液を加熱すると、40~60℃で還元糖とグルコース(ブドウ糖)が大量に生成される。生米の外部に付着していた還元糖成分は洗米中に2/3が流されてしまうが、浸漬中に浸漬液にも残りの1/3が溶出するので、浸漬液は炊く前に交換しないほうが甘みが強くなる。
※2 一般的な水加減よりもわずかに少なめ。鍋や火力、好みで変動する。炊飯の仕組みがざっくり分かったら、2回目以降試行錯誤してみること。
※3 米が吸水するのは常温で約2時間まで。以降は膨潤しない。そのまま常温に置いておくと発酵→腐敗する可能性があるので、冷蔵庫へ。ただし前の晩から冷蔵庫浸漬させるときには冷蔵庫の温度を少し上げておく。庫内の場所によっては、浸漬させた水ごと凍ってしまうことも。洗い米は冷凍されてしまうと、炊き上がりがボロボロになってしまう(実際、この夏の炊飯実験で何度かやらかしました。しかも複数の冷蔵庫で)。
※4 炊飯時に米由来の還元糖が最も生成されるのは40~60℃、アミノ酸は60℃から沸騰までの間。40℃まではどちらもほとんど生成されないので早く通過して、その後に使える時間を回す。
※5 おひつは使う前に内側を軽く湿らせておく。ご飯を切ってすくうようにしゃもじに取り、おひつにふわっと置くように移す。樹脂加工系の底部分は固まりがちなので切るようにほぐす。
※6 土鍋の場合はおこげが比較的取りやすいが、火力の立ち上がりや強弱のコントロールが分単位で遅れるので、火力の微細なコントロールが難しい。その反面、細かいことを言わずにずっと中火で炊いてもわりとおいしい炊き上がりになるが、特に口の広い土鍋は炊き干されるのが早く、過ぎたおこげになることも。特に土鍋は鍋のそばを離れず、中盤以降は常に香りをチェックだ。
※7 蒸らしの工程が生まれた理由は羽釜の頃、鍋肌のおこげが取れずにもったいないからという理由もあったのではないか……というのは筆者の推測。
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