おいしいご飯のキーワード「外硬内軟」
それから20年、さまざまなご飯を食べてきたが、僕にとってのおいしいご飯には通底するキーワードがある。
「外硬内軟」。もともとは酒造業界でいい蒸米の目安として語り継がれてきた言葉で、読んで字の如く「表面が硬く、内側は軟らかい」状態を指す。
近年、炊飯のメカニズムが解き明かされるにつれて、かまどで炊いた米が「外硬内軟」に近いということが分かってきた。中心まで浸透した水分ごと米が加熱され、デンプンはしっかり“糊化”していながら、表面から余計な水分は飛んでいる状態だ。
加熱された米のデンプンは、もちもちとした粘りと、心地よく跳ね返すような弾力というふたつの食感を食べる側に満喫させる。そう、「おいしさ」とは食味によるものだけではない。味の骨格は「食感」と「食味」の組み合わせで形成されるのだ。
ではご飯の「味の骨格」の構成要素とはなんだろう。
まず「食感」は、舌の上に乗せた瞬間の米粒の表面がなめらかか、ざらつきがあるか。その後、ひと噛み目の弾力はどうか、口の中でのほぐれ(粘り)はどうか。ふた噛み目以降のテクスチャーだってさまざまある。
もちろん食感だけでなく、食味もいろいろだ。口に入れる前の香り、舌に乗せたときの還元糖の甘さ、ひと噛み目のアミノ酸の味、噛み終わりの甘さ、喉を通したときに鼻へと抜けていく味と香り――。
旨い米は甘みと粘りだけで構成されているのではない。舌触りに弾力、香ばしさ、アミノ酸由来の旨みなど、米一粒の中に普段意識していない味わいが秘められている。舌触りがなめらかで、ひと噛みすると弾力と旨みが弾ける。その74%がデンプンで占められている米に対して、水と熱でどうアプローチするかという楽しい迷宮、それが炊飯なのだ。
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