そうじゃない。むしろムラがあった方が感じられるおいしさもある。ステーキの焼き方にも通底するが、全体が均等な加熱ではなく、ガリッと強い食感と揚げ色の表面があり、そのすぐ内側にはしっかり加熱されて食感の強い、かみちぎりたくなるような肉質――。

 そこから肉の内側に向かうに連れて、肉はやわらかく、きめ細かくなっていき、肉由来のジュースも増していく。ひとつのから揚げにいくつもの食感を込めるおいしさもあるはずだ。

意図的に味むらを作ると、味がダイナミックになる

 さらには味つけも、もみ込んで漬け込むような"熟れ"た味を全体に均一に浸透させるのではなく、から揚げの外縁につけた下味で肉内部のフレッシュな味わいを楽しむアプローチもあるのではないか――。

 刺し身にしょうゆをつけたり、日本そばの先端を味の濃い辛汁にちょんとつけるような変化のある味わいを楽しむ。個人的には最近、ひとかみのなかにそんなメリハリのあるから揚げが好みだ。もちろんから揚げである以上、高温で衣の表面にメイラード反応(褐変反応)を起こし、ガリッとした食感に深い揚げ色の香ばしさも欠かせないのではないだろうか。

 近年のから揚げは重層的な味付けがはやっている。漬け込み液にカツオだしやポン酢など様々な味を加えたりもする。甘さを強調して、一口目、口に入れた瞬間から食べ手の舌を捕まえにいく。そうした“足し算系”の味わいは確かに一口目はおいしい。だが過剰なうま味で舌を捕まえても、食べ飽きたり、食べ疲れたりするのが早い。

 そもそも鶏肉は中華やラーメンにおいては立派なだし材だ。そこにしょうゆや酒、にんにく、しょうがなどのうま味を重ねた上、油で揚げている。少なくとも、家庭のから揚げ自体にこれ以上味の要素を加える必要はないのではないだろうか。

次ページ から揚げにベストの新たなつけ合わせを考える