「肉汁」はいつも誤解されている。世の中でいわれる肉汁とは「肉の内部に蓄えられた、肉由来の水分と油分の総称」だ。ハンバーグなどはナイフを入れたとき、肉汁がドバッと流れ出すような画(え)作りが、テレビでも動画サイトでも好まれる。

 でも、ちょっと考えてみたい。おいしさの象徴が肉汁だとするならば、ナイフを入れた瞬間、断面から流れ出た肉汁≒旨味は人間の口には入らない。

 肉汁と聞けばおいしそうに感じられるが、ハンバーグの断面から流れ出る肉汁は油分だ。ハンバーグ用に販売されている合いひき肉には脂肪分が少々過剰なくらいに含まれている。

 家庭の手作りハンバーグは、スーパーの牛と豚の合いびき肉から作られることが多い。売り場でパックを眺めていると、脂身の比率がずいぶん増えたような印象がある。そもそも、ひき肉に使われる豚肉は脂が多い。脂の多いひき肉はハンバーグのような、おまとめ系ひき肉料理には不向きなのだ。

 料理上手になるための早道としては、「工程」に対する「効果」を実感するというステップが欠かせない。赤身肉でハンバーグを作ると、ひき肉料理に対する理解が一気に促進される。というわけで、今回は「肉味しっかり!ビーフハンバーグ」を突き詰めてみたい。

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