「ペレ協定」を破棄したプーマ

 アディダスとプーマの争いはゴシップの類も含め度々話題を呼んだ。中でも注目されたのは「ペレ協定」と「ヨハン・クライフ問題」だろう。

 かつてのダスラー兄弟商会はサッカーの人気に下支えされてきた。そのためアディダスとプーマは、選手やチームに金銭を支払って自社製品を使ってもらい、広告塔として利用することを続けた。だが、それにお金をかければかけるほど自らの首を絞めることになる。

 年々その費用が増えていった結果、アディダスのホルストとプーマのアーミンは70年にメキシコで開催されたW杯において、活躍すると見られていた選手についてある協定を結ぶ。その選手はサッカーの神様こと「ペレ」だ。彼との契約は、過去最高額になると予想されたため、アディダスとプーマの両社はどちらもメーカースポンサーをしないと取り決めたのだ。それが「ペレ協定」だ。

 だが、プーマのアーミンはアディダスと密約を結んだにもかかわらずペレとコンタクトを取っていた。W杯開催直前にペレ協定を破棄し、比較的安価な契約金額でペレと契約を取り付けたのだ。アディダスのホルストは、約束がほごにされたと怒り心頭だったという。

 ブラジルが優勝したメキシコのW杯におけるマーケティングは、プーマの圧勝で終わった。ペレ協定で休戦したかに見えた両社の戦いは、より深い断絶を生むこととなった。

W杯メキシコ大会に向けて「ペレ協定」を結んだにもかかわらず、プーマは協定を破り、サッカーの神様ペレと契約を結んでしまう。彼の活躍が報じられると共に、プーマのサッカーシューズの売り上げは増えていった(写真:AP/アフロ)
W杯メキシコ大会に向けて「ペレ協定」を結んだにもかかわらず、プーマは協定を破り、サッカーの神様ペレと契約を結んでしまう。彼の活躍が報じられると共に、プーマのサッカーシューズの売り上げは増えていった(写真:AP/アフロ)

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