スポーツシューズの歴史の中で伝説をつくった「アディダス」と「プーマ」はもともと兄弟が起こし、第1次世界大戦後のドイツ経済の復興と共に成長した企業が基になっている。だが、その後、兄弟は対立し、会社は分裂してしまう。前編では両者が仲たがいする前、共に育てた「ダスラー兄弟商会」の興隆を取り上げる。
ダスラー兄弟商会の誕生
ドイツ、ミュンヘンの北に位置するヘルツォーゲンアウラハという村からあるスポーツシューズメーカーの歴史が始まる。1898年、靴職人のクリストフ・ダスラーの子として後にプーマを立ち上げるルドルフ・ダスラーが生まれる。そして1900年、アディダスの創業者となる、弟のアドルフ・ダスラーが誕生する。

靴作りにはげむ職人の父の下、スポーツシューズ製造を自分の仕事にする下地はあった。2人は体を動かすのが好きだった。ときに、のどかな田園風景の中を走り回り、活発な幼少時代をすごしたという。
その後、第1次世界大戦が勃発する。ドイツは敗戦国になり、ダスラー家は貧困の時代を迎える。ダスラー家は家業として洗濯業も営んでいた。だが、国全体が貧しくなり洗濯を頼む人が激減し、洗濯業をたたむこととなる。
1922年、不要となった洗濯用の作業場をアドルフが靴の制作場として改造し、たった1人でスポーツシューズを作り始める。2年後の1924年、兄のルドルフが弟のビジネスに参加する。そうして創業したのが、「ダスラー兄弟商会」である。
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