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 日本の人口減少が始まり、国内市場が縮小していく中、中堅・中小企業でも海外進出を再び考えるところが増えている。化粧品メーカーのマンダムで長く海外現地法人の責任者を務めた後、マンダムと菓子メーカーの森永製菓の本社部門で海外担当責任者を務めた著者の山下充洋氏が、中堅・中小企業の海外進出に必要な心構え、準備、流通網の構築、パートナーの作り方などを具体的に指南していく本連載。第5回は、海外進出を成功に結び付けるための本社と現地法人の役割分担について語ってもらった。

 第4回は現地駐在員の選定の重要性と、配置する人材の選び方について「人選の失敗は、事業の芽を摘み、進展に大きなダメージを及ぼす」と指摘しました。そのことは今回のテーマである海外事業を展開する体制の整え方を理解すると、さらに重要性を納得していただけるはずです。

 海外進出プロジェクトに関わる全てのメンバーは、志を同じくする1つのチームでなくてはなりません。チーム一丸となって海外進出を成功させるために、現地法人と本社サイドにおいて、役割と権限をどのように分担すべきかをお話しします。

 実際に海外事業の運営を始める際には、本社と現地法人の役割を明確にしておく必要があります。まず理解しておきたいのは「主役はあくまでも現地法人である」ということ。本社と現地法人は、管理する側(やらせる人)と実行する側(やらされる側)という関係になってはいけません。本社と現地法人は同じチームの対等なメンバーであると認識し、それぞれの役割を果たすことが重要です。

本社と現地法人は管理する側と実行する側という一方的な関係になってはならないと、山下充洋氏は指摘する

 まず、始めに本社と現地法人がすべきことは、進出先の経営環境と市場状況を正確に共有することです。

 市場は常に変化します。インフレが急激に進む場合もありますし、政治体制が生活に大きな影響を及ぼすこともあるでしょう。競合メーカーが新製品を導入したり、生活者の流行や指向性が変わったりもするでしょう。目まぐるしい変化の中で勝負をかけるには、“現地で今”、何が起こっているのか、なぜそれが起こっているのか。現地が常にアンテナを掲げていち早くその変化に気付いてその原因を追究し、本社は現地の報告からそれを認識して先の流れを予測してください。