海外では明るい前向きな人材を選ぶ

 海外に送り出す人材の選び方は仕事の能力だけではありません。性格的にも海外進出に向いている人材があります。

 私が海外担当をしていた頃のマンダムでは、海外に赴任する社員の資質を「笑顔(人柄)と鉄の胃袋(メンタルの強さ)」などとよく話していました。まず、笑顔とは「社交性があって人柄のいい人」という意味です。ユーモアのセンスや人柄はユニバーサルなもので、誰にも好かれる「いい人」は世界共通で重要な資質だと実感しています。そして、海外駐在や海外出張は言葉や習慣、気候、食事などが日本と異なり、付き合いの飲酒など何かとストレスがかかります。ですから「鉄の胃袋」は必須です。

 私が長年の経験から感じる海外ビジネスにおける大事な資質の一つは、「人を見下さない」ということです。どの国の人、どんな立場の人に対しても相手を下に見たりせず、フラットな視点で話ができることは駐在員の基本です。クレーム処理のときと同様に、相手の不備があれば対等な立場からきちんと指摘できる能力も欠かせません。

 誰に対してもフラットであることは「裏表がない」という重要な資質にもつながります。現地スタッフに対する態度と本社の上司に対する態度があからさまに違うような日本人出向者は現地スタッフや取引先に信用されません。スタッフや取引先は日本人の普段の言動をよく見ているので、すぐに見透かされてしまいます。

 現地に出向する人の役割としてまず重要なのは、現地で人脈をつくることです。単に「知っている」というレベルの情報なら日本でもインターネットで調べることができます。そうではなく、現地に担当者を送るのは、生きた情報をお互いに共有できる人たちとの人間関係を築くためです。一方的に相手の持つ情報を欲しがるだけでは人脈は築けません。相手が得をする情報、求められている情報を提供しながら、互いに相談を持ち掛けられるような関係ができて初めて人脈となります。

 もう一つ必要な資質は「正義感」です。相手のミスにもかかわらず現地スタッフが非難されたようなときに、自分のことのように一緒に相手に対して怒りの意志を伝えられる親分肌の人は海外でも信頼されます。「ボスはいつも自分たちのことをしっかり見てくれているんだな」という気持ちが現地スタッフにも広がるからです。現地スタッフも有力な人脈です。今一番流行っている店とか、おしゃれで人気のある場所、一番売れている歌や歌手、商品やブランドといった情報は生活者である感性の高い現地スタッフに聞くのが一番早いからです。

おしゃれで人気のある場所は現地スタッフに聞くのが一番早い(写真=PIXTA)
おしゃれで人気のある場所は現地スタッフに聞くのが一番早い(写真=PIXTA)

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