日本の人口減少が始まり、国内市場が縮小していく中、中堅・中小企業でも海外進出を再び考えるところが増えている。化粧品メーカーのマンダムで長く海外現地法人の責任者を務めた後、マンダムと菓子メーカーの森永製菓の本社部門で海外担当責任者を務めた著者の山下充洋氏が、中堅・中小企業の海外進出に必要な心構え、準備、流通網の構築、パートナーの作り方などを具体的に指南していく本連載。第4回は、海外市場進出に適した人材の資質、選び方について語る。

 前回お話ししたのは、進出目的を熟慮して決定し、関係者全員で常に意識して共有するということでした。今回は、その目的を達成するため、現地にどのような人材を送り込み、どう配置するかを考えていきましょう。

 ヒト・モノ・カネそして情報という4つの経営資源をどう配分するか。これはどのような事業でも結果を出すために重要なこと。その中でも直接的に結果を左右するのが「ヒト」というファクターです。事業立ち上げの段階でこれを間違えると、事業の芽を摘んでしまいます。

必要なのは「0から1を生み出す能力」

 現地出向者に必要な才能は、大きく2つあります。最も理想的なのは、「0から1を生み出す能力のある人」。全く販路や人脈のないところでやるべき仕事と優先順位を整理して実行できる、つまり自ら行動できる人物です。これは既存の市場で5を6に、6を7に伸ばす能力とは性質が全く異なります。「目の前の課題から逃げず有事に強い人」「安易に責任転嫁をしない人」と言い換えることもできるでしょう。

0から1を生み出すことができる人材は、日ごろのクレーム処理が的確と、山下氏(写真=宮田昌彦)

 こうした人材を見出すのはどこを見ればよいのか。身近な例を一つ挙げればクレームが発生したときです。営業担当者にとって、クレームがあったときはチャンス。なぜなら、初めてお客と普段はできない深い話ができるからです。まず非を認めて謝罪をするのは大事ですが、ただお詫びをするだけでなく、そこに至った経緯、理由を説明し、「当社はこういう考え方に立って事業をしているので、Aという点は保証できるが、この線以上は譲れない」と伝えてください。さらには「今回の件を受けて今後はこのように対応する」などと、自社で対応できる範囲と対策を具体的に説明し、理解を得ます。こうして今回のやり取りで今後のトラブルを減らすにはどうするか具体的な方針を示し、さらには自社の企業理念や姿勢を改めて説明し、取引先との信頼醸成につなげるのです。

 このように、クレームをチャンスとして生かすには事の成否を判断し、説明のために経緯をまとめ、取引先との落とし所を判断し、さらに今後のトラブルを防ぐ対策を立案しなくてはいけません。