日本の人口減少が始まり、国内市場が縮小していく中、中堅・中小企業でも海外進出を再び考えるところが増えている。化粧品メーカーのマンダムで長く海外現地法人の責任者を務めた後、マンダム、菓子メーカーの森永製菓の本社部門で海外担当責任者を務めた著者の山下充洋氏が、中堅・中小企業の海外進出に必要な心構え、準備、流通網の構築、パートナーの作り方などを具体的に指南していく本連載。第2回は、海外進出する前にまず考えておきたいコアコンピタンス(自社の核となる手法・特色・技術)の見極め方を取り上げる。

山下氏は、自社の「コアコンピタンス」を明確にすることが海外進出成功のカギだと話す
(写真:宮田昌彦)

 前回の連載で、根拠のない自信を基にした海外進出は失敗につながると指摘しました。つまり、自社の核となるやり方・特色・技術、そして日本での成功の真因をもう一度分析して「我が社はこれで勝つ!」という方向性を決めておくことが重要になります。これこそがまさに、自社のコアコンピタンスを明確にするということです。そこで今回は、コアコンピタンスを再確認するにはどうすればよいかを具体的に見ていきます。

自社の業務を棚卸しする

 例えば、中堅・中小製造業の場合を例にとると、同じ金属加工やプラスチック成型でも、昔は自動車や家電製品のパーツを製造していたが、現在はパソコンや携帯電話のパーツが中心になっているというように、創業時から次第に事業領域が変遷した会社も多いのではないでしょうか。

 「○○より△△のほうが儲かる」「○○より△△のほうが成長できる」といった時代ごとの経営判断で主力製品を切り替えて今日まで成功してきた会社もあるはずです。

 これまでさまざまな製品をつくってきて、なぜ自社は生き残ってこられたのか、結局自社の強みは何だったのかをはっきり示せないという会社も多いのではないでしょうか。

 そこで海外進出に関わるメンバー全員で一度、これまでの自社の展開領域や扱う商品の特徴を棚卸ししてみることをお勧めします。これは海外進出時に何を主力にすればよいのかが分かるだけでなく、より強みのある事業領域にシフトしてきた経緯を把握できるので、既存の国内事業にもプラスになります。手持ちのノウハウを使って、自社が事業を広げられる範囲が最大どこまでかを認識できるといった効果もあります。面倒がらずにまずは棚卸しに取り組んでみましょう。

 では、実際の棚卸しは、どこから始めればよいでしょうか。

 まず、経営トップ、海外事業責任者、経営企画、出向予定者など、海外進出に関わるメンバーで、自社の理念と歴史を振り返る作業をするところから始めましょう。

 最初に思い出すべきは、主力商品の流れです。現在の主力商品や歴代のヒット商品を洗い出し、そのそれぞれについてどんなコンセプトで商品化し、どんな機能や特徴があったのかといったポイントをリストアップしていきます。

自社商品の歴史を洗い出すポイント
  • 商品開発したタイミング
  • 商品開発のコンセプト
  • 商品の特徴、機能
  • 商品を改良したタイミング
  • 販売方法の変遷
  • どんなチャネルで販売したのか
  • どんな宣伝方法をとったのか
  • ベンチマーク(比較となる指標)は何だったのか
  • 背景となる当時の社会や流行の現象

 これらの要素を並べ、皆で議論すると、商品の品質やコンセプトだけに留まらない、商品のヒットにつながった、時代の要請、競争環境の変化、消費者の生活の変化など、複合的な成功の理由が分かってきます。

 すると、それらの成功要因から、自社が海外で再現できるのはどんなことか、日本でヒットしたときと似た社会状況になっている国があるかといった、海外で成功するための糸口を探せるようになります。

 さらに、販売方法の転換、商品の改良といった要請をどの部署の誰が、いつ行ったのかを精査しておくと、海外という新しい市場に進出するために、何を準備し、どんなタイミングで何を実施すべきかあらかじめ計画を立てることができます。

 こうした見直しを徹底することは即ち自社が立ち戻るべき原点は何か、先輩諸氏がどんな思いで挑戦したのかを追体験することにもなり、海外市場で苦しい戦いを強いられたときの救いにもなります。