自社の強みが分かっていれば、広い海外市場の中で、どの国を狙えばよいのか、おのずと見えてきます。例えば、化粧品や食品などの一般消費財なら、人口が多くて日本文化になじみがあり、日本企業の優位性が比較的通用しやすい、インドネシアやフィリピン。生産機械なら、域内の生産機能が集約しているタイやマレーシア。高付加価値の商品ならば、人口は少なくても富裕層が多い香港やシンガポール、台湾、ドバイなどです。
日本流にしがみつくのは失敗のもと
ただし、自社が今まで蓄積してきた日本での成功体験をそのまま海外で再現しようとするのは愚の骨頂。決してうまくはいきません。当然ながら、各国・地域ごとに国民性や価値観が日本と異なるからです。そして他国においては、認知度も信頼もない無名の企業としての出発ですから、国内での事業とはスタートラインがまったく違います。場合によっては、日本でまったく手掛けていないことにも挑戦しなくてはなりません。
「海外は日本とは違う」と頭では分かっていても、日本でのやり方から脱却できないことも多々あるものです。
例えば一般消費財の場合、高級志向で目の肥えた人が多いドバイ、シンガポール、香港などでは、日本にはない高価格帯商品を開発するために知恵を絞らなくてはなりません。例えば、日本で1000円の商品を豪華な仕様にして5000円で売れる商品に仕立て直すことが必要です。
逆に、所得は低いが巨大な人口を有するインドネシア、フィリピン、インドなどに進出するなら、その市場の消費者がいくらなら購入できるのかを肌でつかんだ上でコストダウンを進め、ボリュームゾーンを狙える価格の商品を実現する仕組みを考えるのです。
最もダメなのは、現地に合わせる工夫がないこと。一般消費者のボリュームゾーンを狙える価格にできないとはなから諦め、日本市場向けの商品をそのままの仕様で持ち込んで現地の富裕層向けに少し高く売るだけに留めるといった例が典型的です。
海外に行っても日本にいるときと同じ視座から抜け出せないようでは、成功はありません。日本では考えられない高価格で、あるいは低価格で売るための商品や仕組みを開発する。そんな経験の中に新たな発見があるはず。海外市場は、今まで検討したこともない、日本ではありえない領域を狙い、知恵・発想を磨く腕試しの場と位置づけてはどうでしょうか。
海外進出による経験が国内事業にもプラスに
日本と違う発想によって現地で真剣勝負をすれば、日本の事業にフィードバックできる発見が必ずあります。例えば、現地生産によるコストダウンができたら、日本で売る商品も現地で作れないかを考えて利益アップを目指す。原材料や包材のコストダウンができたら、それを日本の商品で使えないかを考える。海外ビジネスを既存の経営と結びつけ、全社に生かすビジネスチャンスにすべく、腹を決めて取り組むこと。本気でやれば、必ず得られるものがあります。
次回からは、今回全体像を紹介した海外進出の基本となるポイントをそれぞれ具体的にお話ししていきます。
(構成:田北みずほ、編集:日経BP総研 中堅・中小企業ラボ)
10月12日、中堅企業 成長戦略勉強会キックオフセミナー(無料)を開催!
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中堅企業のトップ、経営幹部の皆様に、関心あるテーマごとにお集まりいただき、講師と参加者が共に学び合う場をご用意いたします。勉強会のテーマは「アジア進出」「デジタル化&生産性向上」「新規事業創出」の3つです。
「アジア進出」の講師は、本記事の著者である山下充洋氏が務めます。マンダム、森永製菓で約30年にわたる海外担当の経験を生かし、わかりやすく具体的な海外進出のコツを披露していただきます。
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