「とりあえず進出」「慎重に検討して進出」はどちらでもよい
多くの中堅・中小企業が海外進出をするきっかけは大きく分けると2つのパターンがあるでしょう。一つは「たまたま、ある国に知り合いがいたので、何となくそこに進出する」というもの。もう一つは「数年間かけて慎重に検討を重ねた上でふさわしいと考えた国に進出する」形です。そのどちらが成功確率が高いのか。
きっかけとするのは、どちらのパターンでも構いません。その代わり、正しい進出の考え方をよく理解し、自分たちに起こりうるリスクにしっかり備える必要があります。
前者の「とりあえず進出」派の場合は、現地でのビジネスをスタートさせながら、起こりうるリスクを大至急調べ、同時進行で備えを始める必要があります。
一方、「慎重に検討して進出」派の場合は、いくら準備をしたとしても新規事業には想定外の事態が起こるという危険性を常に念頭におくこと。何かが起こっても必要以上に萎縮しない、と腹を決めておくことです。日本国内での事業であっても、新しい取り組みにリスクはつきもの。100%の予測はできません。それと同じことです。
重要なのは、自社にとって致命傷にならない範囲を見極めながら挑戦を始めること。海外進出という挑戦自体が全て新たな体験です。その体験を通じて必ず自社の成長にプラスとなる何かを学び、蓄積していくことができます。困難に遭遇しても、無駄になることは何もないのです。
今後、日本市場の縮小という厳しい現状は変わることはありません。海外に進出する以上、何があってもやり抜き、そこから必ず何かを得る。そうした覚悟を持ってください。
海外進出の経験がある人材がいなければ、本社でも現地でも経験者を雇うことができます。誰も知らない、社名も名刺も通用しない未知の国で、全く何も知見がないところで0から1のビジネスを立ち上げる体験をして、社内に経験値を蓄える。それが御社のこれからの成長につながります。最初は売り上げが数億円で収支が赤字でも、将来に数百億円の売り上げ確保を目指しているなら、最初は我慢して経験値を積み上げ続けることです。

海外進出に当たってまず考えるべきことは?
海外に進出する第一歩として、まずすべきことは何だと思いますか。現地の法制度、規制、市場特性などを調べること? 確かにそれも大切ですが、実はそういった調査よりも先にやっておくべき重要なことがあります。それは、自社の強みを明確にすることです。「そんなこと、改めて考えなくても……」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、自社の強みを明確にすることこそ、海外事業を成功に導くカギなのです。
私の経験では、コアコンピタンス(自社の核となる他社にまねのできない技術や特色)が何かが明確になっていない企業は結構多い、という印象を持っています。
「貴社の強みは何ですか?」。技術か、価格か、技術か、コストか、デザインか、それともビジネスモデルそのものか・・・・・・。明確に答えられない企業は意外と多いものです。
あなたの会社は、今までどんな要素で、競争に勝ち抜いてきたのでしょうか。もし、今まで「偶然」が続いて勝ち残ってきたのなら、そんな幸運は二度と起こりません。
根拠のない自信を基にした海外進出は失敗につながります。だからこそ、自社の核となる技術や特色、これまでの成功の要素をもう一度分析しなおすことから始めてください。要するに「我が社はこれで勝つ!」というものを決めておくことです。自社の強み、勝ち方のパターンを明確にすることが、海外進出に関わる社員全員を一つにまとめるビジョンをつくることになるのです。
まず、経営トップが海外進出に対して腹をくくり、自社の強みを掌握することが初めの仕事です。これまであなたの会社が日本で営々と積み上げてきたコアな価値をもう一度整理してみてください。
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