石坂:私も「この道が絶対の正解」と思って、経営をしているわけではありません。そこで、父の言葉を聞いてしまうと、迷いが出ます。なぜなら、この会社の経営を過去にしっかりやってきた人の言葉だからです。その言葉は重くて、気になる。けれど、そこで私が迷えば、経営の軸がぶれ、社員が混乱します。だから、父の気持ちはありがたいけれど、私が決めたことに異論を出すのは、もうやめにしてほしかった。
そんな空気を察したのか、あるとき父がポツリと言ったのです。
「自分の居場所がもうない」
その一言が、私にはものすごくショックで……。
星野:それは、どうして?

石坂:自分のせいで父が悲しんでいる。そんな事実を突きつけられたら、耐えられなかった。
私はもともと社長になりたくて、社長になったわけではありません。父を助けたい一心で、社長に志願したのです。会社が窮地に陥ったとき、父が「会社を永続させたい」と言い、私もその思いは同じだったから、その意思を継ごうと決意した。だから、父と経営のやり方は違っても、思いは一つなのだと信じていた。なのに、そんなことを言われては困る──。涙ながらに父にそう訴えました。
私だって、人生を賭けている!
すると、父が喉から声を振り絞るように言ったのです。
「……自分は、人生を賭けてやってきたんだ」
そのとき私は、はじめて父に真っ向から反論したのです。
「私だって、人生を賭けてやっている!」
事実、そうなのです。私は、父の願いをかなえ、この会社を永続させるため、ネイルサロンの開業も何もかも、自分個人の夢はすべて捨てて生きてきたのです。だから、ここだけは譲れないと思いました。すると、父はしばらく沈黙した後、こう言いました。
「……まあ、自分もこの先、長くやれるわけじゃない。だから、おまえがしっかりやりなさい」
そして静かに立ち去りました。
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