ファミリービジネスの後継者は、負の遺産を背負ってスタートを切ることがよくあります。残された債務が巨額な場合、機を見て法的整理に踏み切るなど、勝負に出る必要があります。債務に足を引っ張られながらの経営では、会社を大きく変革する展望が開けません。
鹿沼カントリー倶楽部(栃木県鹿沼市)社長の福島範治さんは、民事再生法の適用申請を果敢に決断しました。厳しい状況の中で経営者として、いかに戦う姿勢を維持するか。そのメンタリティーには、大いに学ぶべきものがあります。(星野佳路)

1970年東京都生まれ。青山学院大学卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行、ラグビー部で主将を務める。98年、鹿沼カントリー倶楽部に入る。99年副社長に就任。2004年民事再生法の適用を申請。08年社長に就任
星野 佳路(ほしの・よしはる)氏(左)
1960年長野県生まれ。慶應義塾大学卒業後、米コーネル大学ホテル経営大学院に進学し、修士号取得。88年星野温泉旅館(現星野リゾート)に入社。いったん退社した後、91年に復帰して社長に就任
(写真:栗原克己)
星野:鹿沼カントリー倶楽部に後継者として入社して6年後の2004年、福島さんは民事再生法の適用申請を決断されました。
福島:はい。入社したときは、グループで500億円の負債があって債務超過。銀行の管理下でした。最初はとにかく余計な資産や支出を削り、会社を身軽にしていきました。赤字のスポーツクラブなどを閉鎖したり、父が趣味で買った絵画を売却したりと。
星野:そうして「落とせるものを落とす」のに、どれだけの時間がかかりましたか。
福島:3、4年です。
星野:それは早いですね。
福島:利益が出ていたゴルフ場に集中した結果、02年頃には、翌月の支払いの心配などはしなくて済み、銀行にも少しずつ返済ができるようになりました。
星野:それでも残された負債はあまりに大きかった。
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