星野:いやあ、石坂社長は、いい子供ですよね。そんな言い方をされたら、普通は入社しませんよ。
石坂:うーん。そのとき、何となく父が寂しそうに見えたのですよ。寂しいから、娘を近くに置いておきたいのかな、と思って。

星野:優しいですね。女性ならではでしょうか。それなら娘に継がせるって、いいものですね。自分自身を振り返っても、息子は概して父親に厳しいですよ。私には反抗期真っ盛りの息子しかいませんが、娘がいたら、ぜひ娘に継がせてみたい(笑)。
石坂:それに、いざ入社してみると、父の会社に対するイメージがいい意味で変わったんです。
中学生や高校生の頃は、同級生の親御さんなどから「特殊な商売の家の子」と見られているのを感じて、父の仕事を「格好いい」とはなかなか思えませんでした。
父の仕事が「格好悪い」
星野:私もです。子供の頃、父が経営する旅館を、どうしても「格好いい」と思えなかった。建物は老朽化していて、お客様も宴席などでの行儀がいい人ばかりはなかったですから。
石坂:けれど、現場のすぐ近くで社員の働きを見ると、本当にハードで、すごく頑張っているんです。しかも、産廃処理は本来、社会的に意義ある仕事じゃないですか。なのに世の中には蔑むような空気があって、理不尽だと感じるようになりました。
社員への感謝の念も湧きました。振り返ると、幼いころから、うちの自宅は引っ越すたびに大きくなっていたのです。最初は掘っ立て小屋みたいだったのが、少しずつ立派になって。父が一代で、会社を大きくしましたから。けれど、それはつまるところ、父の下で一生懸命、汗を流して働いてきたこの人たちのおかげだったのだ。30代を目前にする頃には、そう思えるだけ、私も大人になっていました。
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