迷う理由を明らかにせよ

松本 デメリットを感じるとすれば、上場の意味を複雑に捉えているのではないでしょうか。

 例えば、ある会社があって、商品を作っている。何のために作っているか。売るためです。では、ある人が会社をつくった。何のためにつくったのか。いつか売るためだ。このように理解すればいいと思います。上場というのは、会社を売ることです。全部を売るか、一部を売るかの違いはあれど、会社を売ることに変わりない。

 売るなら、高く売ればいい。あるいは当面、売らないことにしてもいい。その選択は自由です。

松本 晃(まつもと・あきら)<br/> 1947年京都府生まれ。京都大学大学院修了後、伊藤忠商事入社。93年にジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人に転じて社長などを歴任。2009年からカルビー会長兼CEO(最高経営責任者)
松本 晃(まつもと・あきら)
1947年京都府生まれ。京都大学大学院修了後、伊藤忠商事入社。93年にジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人に転じて社長などを歴任。2009年からカルビー会長兼CEO(最高経営責任者)

星野 つまり、必ず上場すべきというわけでもない。そこで迷ってしまう経営者が多いのです。

松本 なぜ迷っているかは、重要です。つまり動機の問題です。「あなたは一体、会社をどうしたいのですか?」と、問いたい。

星野 どうしたいのかが分からない人が多いのです。

松本 つまり、自分たちがつくった会社だから、オーナーシップも経営も全部、握りたい。一方、株を手放してお金持ちになりたい。この矛盾をどう解決するか、です。

星野 一番の関心は、やはり持続可能性です。上場するのとしないのとでは、どちらのほうが会社が存続する可能性が高いのか。競争環境が刻々と変化するなかで成長を続け、社会に貢献していくには、どちらを選ぶべきか、です。

 この観点において、松本さんの見解は、上場は正しい選択の1つだ、ということなのですね。

松本 はい。カルビーの創業者の問題意識も、同じだったと思います。おそらく「カルビー」というブランド名は残したかったのでしょう。一方、オーナーシップは要らないと判断した。だから、上場せよと言い残したのでしょう。

(この記事は日経BP社『日経トップリーダー』2016年6月号を再編集しました。構成:小野田鶴、戸田 顕司、編集:日経トップリーダー

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