[視点]
ファミリービジネスが成長したとき、選択を迫られるのが上場を目指すかどうかです。
カルビーは、創業家からバトンを託された会長兼CEOの松本晃さんの下、2011年に上場。好業績に支えられ、株価は大きく伸びました。松本さんがかつて日本法人の社長を務められた、米ジョンソン・エンド・ジョンソンも、創業者の息子である3代目経営者が1944年に上場させた後、世界的な優良企業として発展しています。
上場で飛躍したファミリー企業2社を知る松本さんに、上場の是非を尋ねました。
(星野佳路)
星野 松本さんは、カルビーを上場させました。
松本 はい。ただ、これは2003年に亡くなられた創業者の松尾孝さんの遺志を継いでのことです。
私は孝さんと直接、お会いすることはできませんでしたが、様々な記録や逸話から察するに、極めて優秀な経営者でありました。
そんな創業者が生前、「いつまでも同族経営を続けていたら、この会社は破綻する。会社を永続させるため、上場してパブリックカンパニー(公開会社)にせよ」と、言い残したそうです。
そこで後継者となった息子さんたちが何度かチャレンジしたのですが、実現しませんでした。
だから私にバトンが渡されたとき、上場という目標も引き継いだわけです。

1960年長野県生まれ。慶應義塾大学卒業後、米コーネル大学ホテル経営大学院に進学し、修士号取得。88年星野温泉旅館(現星野リゾート)に入社。いったん退社した後、91年に復帰して社長に就任
星野 明確なゴールとして設定されていたわけですね。
松本 そうです。最初に創業家に頼まれたことが2つあり、1つが上場で、もう1つが米国企業との資本業務提携でした。クリアなミッションとして示してもらえれば、どちらもさほど難しくありません。いずれも実現できました。
星野 いや、実際には難しいものでしょう。創業家の見識も感じるポイントです。創業者の遺志を尊重し、自分たちでは果たせないと判断したら、有能な人材を探して任せる。これができる後継者は、あまりいないと思います。
松本 そうかもしれません。しかも私のことを、創業家への忠誠心の有無でなく、実績で評価してくれます。非常にさわやかです。
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