──星野代表は、自身の後継問題についても考えていますか?
松本 星野さん自身は、誰もが認める優秀な後継者ですよね。
星野 そうですか。お言葉はありがたいですが、松本さんにお話をうかがって、情熱において創業者を超えるというのは相当、ハードルが高いと感じました。
星野リゾートの後継は?
松本 いやいや、星野さんは、星野リゾートのことが大好きで、自分の仕事に情熱をお持ちです。
ただね、だからといって、4代目の星野さんに続く5代目、6代目もそうなるかといえば、どうですか。分からないですよね。
星野 そうですね。確かに、分かりません。
松本 まさに、星野さんは中興の祖なんですよ。そして、中興の祖は、次をどうするつもりか。そこは皆さん、関心を持って見ていますよ。「失敗すればいい」と思って見ている人だっているでしょう。

1947年京都府生まれ。京都大学大学院修了後、伊藤忠商事入社。93年にジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人に転じて社長などを歴任。2009年からカルビー会長兼CEO(最高経営責任者)
星野 なるほど。そこで私は、どうしたらいいのでしょうか。
松本 星野さんより優秀で、星野リゾートの仕事が好きな人が見つかるなら、話は簡単で、その人にトップの座を譲ればいい。けれど見つからないかぎり、今の体制のまま引き継いではいけません。
実際には、そんな人はまず見つからないでしょう。それなら、会社の仕組みを変えていくことです。一人のトップがリーダーシップを持って経営するスタイルから、分権化に持っていく。
優秀なファミリーが経営する企業の最大の問題は、現場に自主性が育たないことです。社員が会社の意思決定に関わらないからです。それは、優秀過ぎるリーダーの下で働く人に共通する宿命のようなものですが、まして、そのリーダーが創業家出身の大株主だったら、なおのことそうなりますよね。
私がカルビーの社員と最初に接したとき、強みを多く見つけました。ただ一つ、課題があって、やはり主体性に乏しかった。だから今、現場に自主性を持たせる人材教育に力を入れています。
星野 つまり、中央集権型から分権型への移行を、松本さんが担っているわけですね。ますますもって、創業家の慧眼に敬服します。
創業家は、経営の座を去るとしてもなお、企業の永続に果たすべき役割を持つのですね。創業家には、経営手腕とは別に大株主としての見識が求められる。それが今日、私が得た大きな学びです。
カルビーの事例で、もう一つ気になるのは、5年前の上場です。同族企業は上場すべきか否か。この点、松本さんの見解を次回、じっくりうかがいたいと思います。

(この記事は日経BP社『日経トップリーダー』2016年5月号を再編集しました。構成:小野田鶴、戸田 顕司、編集:日経トップリーダー)
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