星野 どんな一族なのですか。

松本 家風は質実剛健ですね。5年前の上場後、株価が上がって困惑されておられるようです。創業者の松尾孝さんが1949年に広島で設立した松尾糧食工業が、現在のカルビー。創業者の後は、その長男が5年、三男が13年、それぞれ社長を務めました。いわば三男が中興の祖です。

 さて、そろそろ腰を落ち着けて本題に入りましょうか。

創業家と老害の関係とは

松本 カルビーの創業家一族による経営は、90年代までよく機能していました。しかし、2000年代に入って、踊り場を迎えた。売り上げの成長が止まり、利益がじりじり減り始めたのです。

星野 それは、創業家による経営の限界だったのでしょうか。

松本 そうとは言えません。当時のカルビーでは、様々な事情が重なりましたから。

 ただ一般論としては、中興の祖は老害を招きやすいものです。

星野 なるほど。私も含めて創業家出身の経営者は大抵、在任期間が長いものです。だから興味があるのですが、そんな中興の祖が会社を停滞させるのは、なぜですか。

松本 長くやるのは、やはり優秀だからでしょう。ただ、ファミリービジネスに限らず、およそ経営者の在任期間とは「長きをもって尊しとなす」ではないと思います。むしろ「権不(けんぷ)十年」。どんな人でも権力を10年以上持ってはならないと、私は考えます。

 唯一の例外が、創業者ですね。

星野 おっ、そこは違うのですか。同じ長くやるのでも、創業者と後継者では違うのですか。

松本 創業者というのは、本当にいろいろな苦労を経験しますから。なおかつ、創業する人は数あれど、倒れる人も多く、生き残る人はごく一握りです。つまり生き残った創業者というのは、間違いなく優秀なんです。

松本 晃(まつもと・あきら)
1947年京都府生まれ。京都大学大学院修了後、伊藤忠商事入社。93年にジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人に転じて社長などを歴任。2009年からカルビー会長兼CEO(最高経営責任者)

星野 つまり、会社を成長させる過程の苦労を理解している人なら長くやってもいい、ということですか。

松本 そうですね……。成功した創業者というのは多分に、自分の仕事にしか関心を持たないものです。英語で言うなら、「デディケイト(dedicate/専念)」している。しかし、その後の世代の人は、ほかのことにも興味を持ちますよね。どんなに優秀でも、後継者が社業に100%フォーカスするのは難しいでしょう。