星野:第2に、子供がクーデターを起こす。私は後者の典型例で、21人いた親族の株主を1人ずつ説得して、父を社長から解任し、31歳で経営権を握りました。

 しかし、この2つの方法にはいずれも問題があって、親が亡くなる時期は予測も計画もできません。一方、クーデターを起こせば、かなり消耗します。この2つ以外に、もっとノーマルな「第3の道」がないものか。私が今、痛切に感じている問題意識です。

入山:誰も不幸にすることなく、というわけですね。

星野:ええ。ただ、長期政権が許されるのが、ファミリービジネスの強みであることも事実です。

入山:長期視点を持てるというわけですか。

星野:ええ。ファミリービジネスの長所としてよく指摘される長期視点は、経営者が、自分の引退後の企業や一族の繁栄を願うといった美談ばかりではありません。

 それ以前にそもそも、自分自身の任期が長いのです。サラリーマン経営者の任期は「3年2期の合計6年」が目安などと言われます。一方、ファミリービジネスの経営者は「自分の子供が大人になるまで」です。ざっと20~30年の任期が、最初に約束されます。

得意分野に落とし穴あり

入山:だから、目先の利益にならないことにも時間をかけて地道に取り組めるというわけですね。

 それに対して、サラリーマン経営者は、短期間で分かりやすい成果を残さなければなりません。勢い、手っ取り早く儲かることに力を入れたくなりますが、それでは独自性が生まれません。

 知人のコンサルタントが、面白いことを言っていました。「大手電機メーカーの中期経営計画書をいくつか並べ、社名を隠して読み比べてごらん。どれがどの会社かを当てるのはかなり難しいよ」。実際、確かにそうなんです。

 だからといって、電機メーカーを批判するわけではありません。サラリーマン経営者が率いる大手がひしめく業界であれば、どこも同じような状況です。ここに「3年2期」の経営の限界を感じるのです。短期的な視点しか持てないからイノベーションが起きない。

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