日本人の寿命は、ここ数十年で著しく伸びました。これが皮肉にもファミリービジネスに危機をもたらしています。

 サラリーマン経営者が率いる企業より、同族企業のほうがイノベーションが起きやすいと、早稲田大学ビジネススクール准教授の入山章栄さんは言います。

 私も同感です。特に、価値観の異なる親子の相克が、同族企業にダイナミックな変革をもたらしてきた事実を、見逃してはなりません。ところが、親の健康長寿がこの変革の妨げになっているのです。今回は、この問題を深掘りします。(星野佳路)

前回の記事はこちら

同族経営の強みについて、サラリーマンが経営する企業と比較しながら、意見を交わした(写真:鈴木愛子、以下同)

星野:今の日本には、ファミリービジネスの発展を妨げる大問題があります。

入山:何でしょうか。

星野:親世代の長生きです。しかも元気に長生きするので、経営権をなかなか子供の世代に譲ろうとしないのです。

入山:確かに、今は上場企業でも、80代まで社長やCEO(最高経営責任者)を務める人がいますからね。それから子供に継がせるとなれば、新社長は下手をしたら60代です。

“老々介護”ならぬ、“老々承継”ですか。

星野:そんな年になって経営のバトンを渡されては、受け取る側も困ってしまいます。会社の発展を考えれば、継がせる側の事情で、事業承継の時期を決めるべきではありません。先代が元気かどうかに関わらず、継ぐ側にとって活躍しやすい時期に事業承継すべきで、それはやはり、後継者が30~40代のうちでしょう。

親が急逝すると成功する

入山:だからでしょうか。私は最近、地方の中小企業の後継者と接する機会が多いのですが、伸びている企業に目立つのは、先代が急逝しているケースなのです。不謹慎かもしれませんが……。

星野:いや、確かにそうなのですよ。健康寿命が著しく延びた今の日本で、後継者が若くして経営の実権を握れる理想的な事業承継が実現するのは、だいたい次の2つのパターンのいずれかです。

 第1に、親が早く亡くなる。