日本で「同族企業」というと、あまりイメージが良くありませんが、欧米社会では一定の敬意を得ているようです。

 この違いは、どこからくるののか。アカデミックな研究や教育の差が大きい気がします。

 そこで今回、対談したのは早稲田大学ビジネススクールの入山章栄准教授。米国のビジネススクールの教壇に立ち、世界のトップ学術誌に寄稿するなど、グローバルに戦ってきた研究者です。そんな入山准教授による「世界最先端のファミリービジネス論」。最初のテーマは事業承継、後継者の資質です。

(星野佳路)

入山准教授(奥)が用意した英語の論文をノートパソコンで参照しながら、対談は進んだ(写真:鈴木愛子、以下同)

星野:欧米では、ファミリービジネスの研究が盛んと聞きます。

入山:そうですね。すでに多くの蓄積がありますし、今後ますます注目を集めるはずの分野です。

星野:なぜですか。

入山:1つには、ファミリービジネス、すなわち同族企業の業績が、非同族企業と比べて高いことが分かってきたからです。大規模な統計分析により、その事実を示す論文が次々に発表され、欧米を中心とした海外の経営学では学者のコンセンサスになりつつあると言ってもいいかもしれません。

星野:だからでしょうか。日本と違って、ファミリービジネスに対する敬意があるように感じます。

 そのような研究成果が日本でも広く知られるようになれば、私たちのような同族企業のステータスが上がり、後継者を含めて、優秀な人材を集める力となります。

婿養子が最強の経営者

入山:日本に関しては、非常に興味深いデータがあるのです。そこから導かれる結論は、「最強の後継経営者は婿養子である」。

星野:そうですか。それが事実なら、私にとって大発見です。

入山:根拠となるのは、京都産業大学の沈 政郁准教授と、カナダ・アルバータ大学のヴィカス・メロトラ氏らが、数年前に発表した論文です。メロトラ氏は、ファミリービジネス研究における世界的な権威であり、論文が掲載されたのは、トップ学術誌の「ジャーナル・オブ・フィナンシャル・エコノミクス」。まさに世界最先端の研究成果です。

星野:具体的には、どんな内容なのでしょうか。