開業資金は調達できたものの、ある問題が浮上しました。肝心の料理人が決まらないのです。
サバ料理だけを提供し、野菜は使うが、肉は使わないという店の方針を求人に応募してきた料理人に伝えると、彼らは途端に興味を失うのです。やはり、料理人は様々な食材を使って、多様な料理を作りたいという気持ちが強いようです。メニュー数はサバにちなんで38種類提供することにしていました。この点も料理人にとってはマイナスでした。サバ料理だけで38種類のメニューを開発するのは無理だと思うようです。
しかし、サバ料理専門店を出すと言って資金を募った以上、そのコンセプトを変えるわけにはいきません。私の中でも、何としてもサバだけの店を実現したいという思いがこれ以上ないほど強くなっていました。
何人か面接した中で、一度は断ったものの「やっぱり、やらせてください」と決断してくれた料理人が1人いました。現在SABARの総料理長を務める上原裕樹です。彼には本当に感謝しています。
メディアの露出効果で初月から損益分岐点を超える
SABARの1号店である大阪福島店は、14年1月10日に開店しました。その前日にマスコミを招くプレスプレビューを開催しました。メディア各社から取材してもらい、番組で紹介してもらったり、新聞に記事を掲載してもらったりするための大切な日です。
事前に各社にメールやファクスでプレスプレビューの案内を送っておきました。その結果、オープン当日の朝に、情報番組で店が紹介されました。ほかにも数人の新聞記者から取材を受け、専門紙や一般紙の近畿版で紹介されたほか、日本経済新聞の全国版に「『サバ好き』ネット出資で専門店」と題された記事が掲載されました。
実は、店のオープン時には、調達額は目標としていた1788万円に届いていませんでした。しかし、オープン直後からいくつかのメディアに取り上げられたことで、約400万円が上乗せされ目標額に到達できたのです。

メディアでの露出効果もあり、SABAR大阪福島店は絶好調。店舗面積は23坪で月商は店をオープンした1月が278万6742円、2月は399万8186円、3月は490万6068円と右肩上がり。初月から損益分岐点の212万8571円を突破し、翌月には事業計画上の目標であった308万7000円を突破しました。その結果、出資してくれた人に十分な配当金を支払うことができました。
この店を出したことで、ずっと家業として運営してきた鯖やが、ようやく企業になったような気がしました。
(この記事は日経BP社『サバへの愛を語り3685万円を集めた話』を再編集しました。構成:片瀬京子、編集:日経トップリーダー)

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