スタイリッシュで高性能のキャンプ用品をつくり、熱狂的ファンの多いスノーピーク。社長就任以来、積極的に事業を展開する山井太社長だが、社員や社外の関係者とは、どんな人間関係を築いてきたのか。
(前回の記事は
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2016年3月、スノーピークは、東証一部上場の記念式典を本社がある新潟県三条市で開催した。取引先や地元財界人など300人以上の関係者が足を運び、参加者からは「結婚式のような式典だった」と言われるほどの温かい催しとなった。
その会場で驚くことが起きた。普段は、まるでロボットのように冷静で感情を一切表に出さない取引先の男性が、壇上で挨拶しながら感極まって涙を流していた。これまで気付かずにいたスノーピークに対する熱い思いを知り、感激もひとしおだった。
私の周りには、仲間が多いと言われることもある。
しかし、仕事をする上で、社内外に味方をつくろうとか増やそうとか、一度も考えたことはない。もっと言うと、周囲の人に対して敵や味方という見方をしたことがない。
ただ、よく考えてみると、私には敵のほうが多いかもしれない。思ったことを、そのまま口にしてしまうからだ。
例えば、20~30年前、地元で「この街は、安いものばっかり作ってるけれど、高いものを作った方がいいですよ!」と言い続けていた。これは相当角が立った。私を鼻で笑っている人も大勢いた。年配の先輩方からは「お前、そんな高いものばかり作って売れるのか!」と言われ、全く考えが合わなかった。
分かってもらえなくても、どちらが地域のためになるかと一人考え、私は私なりの発信を続けてきた。
もし、味方をつくろうなどと思っていたら、そんな言い方はしなかっただろう。
上場の記念式典の冒頭で、集まった関係者たちに挨拶する
大切な人材が去っても構わない
社内にも大切な人材がたくさんいる。今、隣に座っている社長室長も、私にとってなくてはならない存在だ。でも「お願いだから会社に居続けてくれ!」とは思わない。
社員一人ひとりにとって、この会社が自己実現できる場所なら残ればいい。しかし、この場所以外に自己実現ができたり、社会のためになるポジションがあったりするなら、そこに移るのでもいい。
前々回の連載で、何か問題があると人や環境のせいに“他責化”しがちなベテラン社員のことを「へんこつ(頑固な)ベテラン」と冗談交じりに呼び、まずは自分を顧みてほしいと伝えている、と書いた。やはり、社内でも思ったことをすぐ口にしている。
私のアドバイスを聞き、発言や行動を改めた社員がいる一方で、実は、なかなかそうならない社員も過去にはいた。私は社長になった当初から、伝えることは伝えた上で、その先は相手が決める問題だと思っている。
スノーピークのミッションを共有して働く (写真:栗原克己)
ミッションを共有する仲間を持つ
これからも感動できるモノやサービスを提供し続けたい
本当は寂しがり屋なので、味方が欲しいのかもしれない。
でも「私のために働いてくれなくていいよ」と、ずっと言ってきた。私のために社員が働くのはおかしい。だから、この会社にはそんな人は1人もいない。
私のためではなく、社員は、「スノーピーク ウェイ」というミッションステートメントが好きで働いている。
スノーピーク ウェイ
私達スノーピークは、一人一人の個性が最も重要であると自覚し、 同じ目標を共有する真の信頼で力を合わせ、 自然指向のライフスタイルを提案し実現するリーディングカンパニーをつくり上げよう。
私達は、常に変化し、革新を起こし、時代の流れを変えていきます。
私達は自らもユーザーであるという立場で考え、お互いが感動できるモノやサービスを提供します。
私達は、私達に関わる全てのモノに良い影響を与えます。
私が常に求めているのは、甘え合える味方ではない。スノーピーク ウェイというミッションを共有する仲間であり、同じ目標を追求する仲間なのだ。
(構成:福島哉香、編集:日経トップリーダー)
「スノーピークに学ぶ ファンを作る経営講座」を開催します
世界中から見学者が来る、新潟県三条市のスノーピークヘッドクォーターズ(本社)。今年の秋もこの場所で、山井太社長とキャンプをしながら経営を学ぶ2日間、「スノーピークに学ぶ ファンを作る経営講座」を開催致します。
山井太社長の講演、十分に時間をとったQ&Aに加え、ファンづくりに欠かせない「経営のコンパス」を確かめるワークも実施。美しい自然の中で、スノーピークの世界観を深く体感しながら、経営者としてのあり方を考える貴重なチャンスです。
期間は2016年10月5日(水)~6日(木)、限定20名です。お申し込みは
こちら。
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