私は誰に対しても変わらずに接することができる。相手によって考え方や態度を変えることはまずない。もちろん100人いれば、中には苦手だと感じる人は2~3人はいる。時にはもう二度と会いたくないと思う人もいた。50歳を過ぎてやっと、そういう人にもポーカーフェイスで接することができるようになったが(笑)。
ただ、よこしまな人やずるい人とは合わない。さらに言えば、よこしまな人だと思った途端、一緒に仕事はしない。我々にないものをその会社が有していたとしても、世の中を良くしたいとか、地球環境に貢献したいといった純粋な気持ちとフェアな精神がなければ、一緒に仕事をするのは難しい。純粋な気持ちとフェアな精神こそが全ての大前提だ。
スノーピークはロマンチックな会社なのだ。私は、ギリシャの哲学者プラトンが提唱した人間の理想である「真・善・美」(うそ偽りがなく、善きことを行い、本当の美しさがある)を信じて生きているし、この考えのもとにこそ、きちんとしたビジネスができると思っている。
そうした気持ちさえあれば、多少のことがあったとしても、何十年も一緒に仕事をしていける。
例えば、新日鉄住金とは20数年来の付き合いだ。相手は「鉄は国家なり」と言われた時代からの大企業。しかし、共にいいものをつくろうという一心で、毎回真剣勝負で、品質のフィードバックやディスカッションを続けてきた。
そのおかげでできた製品が、軽量で薄いのに頑丈な上、熱伝導率が低いので口元が熱くなりにくいという特徴を持つチタン製のマグカップ「チタンマグ」だ。
新日鉄住金の社員が世界中から集めてきた優れたチタン素材は、スノーピークの社員が関与することによって、より素晴らしい製品になっていく。
仕入れ先に対して言いたいことははっきり言うが、その分、私はスノーピークでやるべきことはしっかりやる。結果、新日鉄住金とスノーピークの取引額は20年来、伸び続けている。
製品はすべて永久保証付きだ
スノーピークの製品は品質に妥協せずに作っており、永久保証が付く。チタンマグなどの金物製品は、ほとんど摩耗したり劣化したりしないので、100年程度は、もってしまうだろう。
永久保証を付けたきっかけは、自分がお金を払って買った製品が、その価値を感じる前に壊れてしまうことが、私自身とても嫌だったからだ。
あるエピソードがある。20年ほど前のことだ。まだ幼かった娘を農家の友達のところに預けていた。迎えに行くと、その家のおばあちゃんが畑になっているイチゴを指してこう言った。
スノーピークの製品には永久保証が付いている
(写真:栗原克己)
「この畑から好きなだけイチゴを取って持って帰ってくださいね。でも、あっち側のイチゴは農薬をかけているから取らないようにして。うちの人達も、こっちの畑のイチゴだけを食べているから」
この話を聞いた瞬間、これは自分では絶対にやってはいけないことだと感じた。自分が口にしない食べ物は決して出荷してはいけない。それと同じように、品質に自信が持てない製品は出荷してはならないのだと。
当時、既にスノーピークは製品に永久保証を付けていた。おばあちゃんの言葉を反面教師として我が身を振り返り、よかったと安堵したのを覚えている。
自責化人間は他責化人間より伸びる
では、モノではなく、ヒトに対する永久保証はあり得るだろうか?
例えばスノーピークで、問題を起こしたスタッフがいた場合、問題に対する処分をどうするか。以前、役員が集まる場で話し合ったことがある。結論は、問題を起こしたスタッフがスノーピークという会社をまだ心から好きでいるかどうかで判断しようということになった。もし、スノーピークのことがもう好きでなければ、会社からお引き取り願うこともあり得る。
スノーピークのことが好きなスタッフであるにもかかわらず、立ち居振舞いが悪いのならば、育てる私たちの責任だ。その場合は、まだ更生できる可能性がある。
一方で、スノーピークが嫌いになった人を救うことは難しい。スノーピークを嫌いになる人は、「常に自分は正しく、相手が悪い」と他人に責任を押し付ける「他責化タイプ」が多いように感じる。
他責化タイプは、仕事で問題が発生するたびに会社が悪い、環境が悪い、お客さんが悪いと相手の文句を言う。周囲のせいにすることはいくらでもできるが、それでは問題の解決にはならない。
問題を解決できないので、ますます周囲が嫌いになる。上司のことが嫌いになり、自分の置かれた環境が嫌いになり、会社が嫌いになるのだ。
面白いデータがある。
昨年までの数年間、約60店舗ある既存店での平均売上高は前年比約130%で推移した。
店舗はユーザーとの接点となる大切な場だけに、役員も店長の行動に注目している。すると、なぜか店舗の中で、自分のことはきちんと責任を持って考える「自責化タイプ」の店長は3割以上売り上げを伸ばし、他責化タイプは3割ほど売り上げを落としていた。
自分の問題点は自分の責任と常に捉え、「自分の行動を変えれば問題点は克服できる」と考え続けられる人は、成績を伸ばせるのだ。
では、他責化タイプの人間をどうやって自責化タイプにすればよいのか。
実は、他責化タイプになるのは、過去に成功体験のあるベテランが多い。
他責化タイプのスタッフを集め、ちょっと冗談交じりに「へんこつ(頑固者)ベテランチーム」と名付け、人や環境を責める前に、自分を顧みてほしいと促した。
すると、考え方を改めるスタッフが出てきた。半信半疑でも、自分の行動を変えることで問題を解決できたり、売り上げが伸びたりする成功体験を重ねるうち、自分が間違っていたと気付いて変わってくれたようだ。
(構成:福島哉香)
ちょっとした気付きで、人付き合いに悩むことはぐっと減り、ラクになります。今日から実践できる簡単なメソッドを満載した書籍『苦手な人が気にならなくなる本』が好評発売中です。
著者は、大手企業などで講演多数のコミュニケーションコーチ、山﨑洋実さん。「職場で合わない人がいて疲れる」「上司に理不尽な怒りをぶつけられる」「デキの悪い部下にキツくあたってしまう」「チームワークが悪くて作業がはかどらない」「クレーム処理がつらくてたまらない」・・・・・・。
誰もが一度は感じたことのある職場での人間関係の悩みを、口コミだけで5万人を集めた実績を持つカリスマコミュニケーションコーチの山﨑さんが一挙に解決します。
詳しくはこちらから
Powered by リゾーム?