僕はまず幹部全員を集め、「明日から全員定時に帰ってください」と伝えました。幹部が残業していると若い社員が先に帰ることができません。これが残業の多い原因の一つだとみて、まず幹部から早く帰らせようと考えたのです。

 当然、仕事量は急には減らせません。幹部たちは「たまった仕事はどこですればいいんですか?」と質問してきました。僕の出した答えは「仕事を残してでも定時に帰れ」でした。

 「え、定時退社ですか?」
 「仕事の量を考えると定時退社は無理ですよ!」
と、社員たちから非難の嵐でした。

 しかし、ひるまずに僕は伝えました。「君たち幹部が残っているから、新人が早く帰ることができない。上司の顔色をうかがいながら残っている若手社員が多いんです。だから、ひとまず、18時には会社から出てください」

 こんな方法は無茶だと思われるかもしれませんが、突然思い立って強引なことを言い出したのではありません。僕には、作戦があったのです。

マトリックスで業務を断捨離

 幹部には、とにかく定時で退社するように伝えました。でも、幹部の仕事は残っています。仕事を放り出して帰るなんて、誰もしたくないはずです。

 はじめは仕事を残したままで退社させていましたが、幹部たちはそのままでは不安ですから、定時までに仕事が済むよう効率化してくれるに違いない、と考えたのです。これが、僕の作戦です。見事に的中し、2カ月後には幹部が定時退社の際に仕事を残すことはほぼなくなりました。突発的な仕事が発生したときを除き、定時退社できるまでに業務の効率化が進んだのです。

 幹部たちの残業がなくなれば、次は一般社員の番です。幹部たちは自分で仕事に優先順位をつけ、不要な仕事を断捨離(不要なものを断ったり、捨てたりすることでモノへの執着を捨てること)することができましたが、一般社員たちはなかなか難しいのではないかと考え、仕事を整理するためのツールを用意しました。

 それが「ストライプ生産性マトリックス」です。縦軸は仕事にかかる労働時間、横軸はその仕事が生み出す売上高や利益の大きさを取ります。縦軸と横軸のそれぞれを大中小の3つに分けて3×3のマスをつくり、各自の仕事を分類してもらいました。

ストライプ生産性マトリックス。縦軸に時間(コスト)、横軸に売上・利益額を取り、3×3のマスに仕事を分類して優先順位を考える
ストライプ生産性マトリックス。縦軸に時間(コスト)、横軸に売上・利益額を取り、3×3のマスに仕事を分類して優先順位を考える
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 労働時間は短いが、売り上げや利益につながっている仕事は何か。労働時間が長いのに売り上げや利益は少ないものは何か。この表を使って、社員一人ひとりが自分の仕事を棚卸しして非効率な仕事を止める癖をつけさせようという狙いがありました。

 マトリックスに各自の仕事を書き出させてみると、長い時間をかけていながら売り上げや利益が低い仕事をしているスタッフが多いことが分かりました。「生産性の低い仕事は全部やめよう」と今も伝え続けています。

 例えば、フェイスブックに社内のことを1日2回投稿する仕事。これは売り上げに直結しません。そこで投稿回数を減らすことにしました。

 こうした細かい見直しを積み上げ、一般社員の仕事についても断捨離を進めた結果、3~4カ月後には18時には全員が仕事を終えて、18時15分の消灯時には退社できるようになりました。やはり、トップが残業を減らすという目標を強く訴え、定時になったら帰宅するように繰り返し伝え続けることがポイントだと思います。

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