これは、「グローバル展開するなら、もっと大胆なことをしないといけない」という、柳井さんなりの叱咤激励だったのかもしれない、と。

 これまでは毎年新店舗を100店舗ずつ出店して、100億円、200億円と売り上げを伸ばしてきました。でも、もしこのまま小型店戦略を続けるとしたら、これから1000億円を2000億円にするまでに、一体何店舗出せばいいのか。そもそも、日本にはもう、そんなチャネルは残っていないのではないか――。

 そこで、私は気付いたのです。「そうか、これまでは1店舗1億円程度の売り上げしか見込めなかった。今後さらに売り上げを伸ばすには、1店舗10億円ほどの売り上げを出せる大型店を出す必要があるのだ」と。柳井さんの話が腑に落ちた瞬間でした。

 百貨店やショッピングモールで店舗を並べる海外のグローバルブランドは、大型店を展開しているところが多い。例えばスウェーデンの「H&M」やスペインの「ZARA」など、世界を代表するファッションブランドの大型店舗と当社の小型店舗が並ぶと、どうしてもインパクトに欠けて見えるのです。柳井さんの言っていることはこういうことだったのか、と納得しました。

 こうして、大型店舗に切り替える決意が固まりました。翌年の2014年には、グローバル展開を見据えるブランド「koe(コエ)」で大型店舗を出店。次に、主力ブランドのearth music&ecologyでも国内で大型路面店の出店を始めました。そして今回、近年苦戦を強いられていた中国に、海外初となる大型店舗、アーストーキョー1号店をオープンしたのです。

アーストーキョーの店内には、「交流」「仕事」「生活」の3つのシーンに合わせ約7000点の商品が並ぶ

大型店でモノからコトの提案を

 大型店舗に方針転換するといっても、ただ単に店舗の敷地面積を大きくするということではありません。アーストーキョーの店舗戦略には、3つの概念があります。

 まず1つが、店舗にファッションショーなどのイベント機能を設けることです。店内に設置したスクリーンでランウェイを映すのではなく、オープン時、アーストーキョーには、実際にモデルが歩くことができるスペースを確保しました。

 これからの時代、店舗はモノだけを売るのではなく、コトの提案をしなければなりません。ただ新作が入ったということではお客様のモチベーションをつなげることはできなくなっているのです。そのため、日本から有名タレントを呼んだり、有名なモデルのファッションショーが見られたりするイベントスペースを持つことも、大型店の大事な概念だと考えています。