これまで経営理念にしていた「お客様第一主義」は、小売業にとっては空気と同じくらい、「あって当たり前」。にもかかわらず、毎日、唱和している店のスタッフが「お客様第一主義」を実践できているかというとそうではなく、悩んでいたのです。

 お客様とどんな関係を築けばいいのか、僕は改めて考えました。そして従業員同士の関係、地域との関係のあり方についても。何年も悩む中で、僕は1つの理想にたどり着きました。それは「家族」のような関係です。

経営理念は「セカンドファミリー」に変えました
経営理念は「セカンドファミリー」に変えました

 常連客は、プライベートな出来事を真っ先に店のスタッフに報告に来てくれる。スタッフは職場の同僚という枠を超え、何でも相談できる関係でありたい。さらに地元にも、もっと深く、もっと温かくかかわっていく。“2番目の家族”のような関係を、スタッフ、顧客、地域社会の間で築きたい。

 そう考えて「セカンドファミリー」という言葉を選びました。今では社員総会も「セカンドファミリーカンファレンス」と呼び、企業理念を再認識できる場にしています。

学生は正社員になるのが「怖い」?

 「全員正社員」制度は、ずっとこだわってきたものでした。

 アパレル業界では、ファッショントレンドがころころ変わり、業績への影響が大きい。どの先輩経営者も「人は調整弁。不景気になったら、いつでも切れるようにしておけ」と口を揃えていたし、実際に店舗で見かけるのはPA(パート・アルバイト)の非正規社員ばかりでした。

 でも、人を切るというのは、競合に塩を送るようなものです。接客や販売のノウハウを学んだスタッフが、これまでの経験を生かして働こうと、ライバル企業に流れる可能性が大いにあるからです。

 「辞めない社員」を育て、ノウハウを蓄えてこそ、他社と差異化でき、競争力が生まれる。スタッフにとっても、終身雇用が保証されて安心して働け、スキルアップに専念できる。「全員正社員」は会社とスタッフ、どちらも安定した成長を望める理想的な制度だと信じてきました。

次ページ 前言はいつだって翻していい