同じような状態に陥っているのが農業市場です。成長産業として捉えられているため、多くの企業が参入を試みています。農業が成長産業であることは間違いないのですが、問題はその捉え方です。

農業市場はターゲットの絞り込みが鍵となる

 農業市場は、

(1) レタスやトマトを工場で作るような「農業工場市場」
(2) ビニールハウスで比較的高価な農産物を作っている「施設園芸市場」
(3) 露地で大量に作物を作る「露地市場」

に大別することができます。これらをごちゃ混ぜにして捉える人が多いのですが、少し無理があります。というのも、それぞれに対して提供すべき商品・サービスが違うからです。

 例えば、農業工場市場においては、大規模な自動化を目的とし、制御機械・センサー、それらにつながる各種機器などをトータルとして提案することに価値があります。一方、施設園芸市場では、今まで経験と勘に頼ってきた光合成促進のためのノウハウを数値化し、収穫量を増大させたり、秀品率を向上させることに価値があります。さらに露地市場では、GPSなどを使い大規模な露地栽培の効率化を図ることが鍵となります。つまり、同じ農業市場といっても、それぞれの市場において求められるニーズも違うため、提供する商品・サービスが全く違ってくるのです。

 もし農業市場に参入しようと思うなら、まずは、どういった市場に参入するのかを決めて、次に、そこでのトレンド、ニーズを明確化し、参入余地を導き出し、しっかりとした差異化ができる状態で参入すべきです。

インダストリー4.0の罠

 話は変わりますが、「インダストリー4.0」という新しいモノづくりの概念がブームとなっています。欧州、特にドイツを中心に、IoT技術や新しい規格の下、製造業の革命を起こそうとしています。ところが、このインダストリー4.0は、USBメモリーのように、どのメーカーとでも取引先を簡単に変えられるような構造になっているのです。果たして日本企業はそんな環境に耐えることができるのでしょうか。

 インダストリー4.0は、工場内にセンサーなどを張り巡らせ、工場間をリアルタイムに繋ぐことで、今まではバラバラだった工場をまるで1つの工場のように動かすという壮大な概念です。これを実現させるためには、通信などで高度な規格化が必須になります。もし、特定の企業群だけが特定の通信規格を採用したとすると、結局は日本の自動車メーカーのような系列ができてしまい、競争が促進されません。つまり、企業の製造ライン同士が規格化された通信でつながれてこそ、この概念は活きてくるのです。

 実は、これを進めれば進めるほど「取り替えが簡単にできるビジネス構造」が生まれてきます。規格化するということは、そこにおけるスイッチングコストは大幅に低下します。営業部隊が頑張って取ってきた大会社との取引が、一瞬にして他社に取られてしまうということも頻繁に発生するでしょう。

 また、もっと深刻なのが、自社の工場が丸裸となってしまう点です。自社の工場の稼働率まで取引先に見えてしまうということは、利益の乗せ代まで知られてしまうということです。今でも、「カイゼン」「業務指導」という名の下、取引先の指導が入って自社の収益構造をつかまれ、「あといくら下げられるはず」と分析されて、どんどん価格を下げられています。インダストリー4.0のような仕組みが入ってしまうと、特に中小企業は、それぞれが単独の企業体として存続していくことは難しくなるのではないでしょうか。