ハンバーガー業界で独自路線を走っている企業にモスバーガーを展開するモスフードサービスがあります。
マクドナルドとモスバーガーの違いは、前者が価格を売りにしているのに対して、後者は素材感を売りにしていることです。価格はモスバーガーのほうが高い設定となっています。ある意味、対極的だと言えます。特にマクドナルドは、少し前に低価格路線で大成功し、デフレの成功者として、マスコミにこぞって取り上げられるほどでした。
一方のモスバーガーは独自路線を踏襲し、牛丼チェーンを巻き込んだ低価格フード戦争とは一線を画していました。つまり、マックが低価格路線でコストダウンを図っている間に、世の中で「パンの革命」が起こってしまって消費者の口が肥えてしまい、2極化をより促進してしまったのです。
社会環境の変化と事業戦略のズレ
日常的においしいパンが食べられるようになった社会において、ハンバーガーのバンズ(パン)はどのような進化をしたのでしょうか。実は、このような社会環境の変化は、顧客ニーズの変化をもたらしたのです。具体的には、
- 第1段階:日常的においしいパンが食べられるようになる(社会環境の変化)
- 第2段階:おいしいパンが当たり前となる(市場トレンドの変化)
- 第3段階:おいしいバンズのハンバーガーが食べたいというニーズが発生(顧客ニーズの変化)
という3段階で変化していくのです。このような状況の中、前述した対照的な2社の対応は、片や低価格路線に対応したコストダウン、もう一方は高付加価値独自路線の踏襲でした。
ここまでくると、マックの業績不振の一因が少し見えてきました。つまり、周りのパンがおいしくなってきているにもかかわらず、低価格路線に対応すべくコストダウンを行ってしまった結果、市場のニーズからずれてしまったと考えられるのです。
おいしいパンのトレンドは、ゴパンのヒット、インストアベーカリーの台頭から始まっていますので、ここ5、6年の現象です。実はマクドナルドの業績は、図から見ても分かりますように、14年の鶏肉偽装問題の前から減少しているのです。一方、モスバーガーは、それに相反するように売り上げを伸ばしてきています。マクドナルドの業績は「おいしいパントレンド」と逆行し、モスバーガーの業績は同調するような動きなのです。
社会環境の変化が市場トレンドの変化を生み出し、ハンバーガーに対する顧客ニーズを変化させてしまう。それもこういった劇的な変化がわずか5、6年で起きてしまうのです。コンビニで何気なく買っている惣菜パンですが、味がおいしくなってきたと感じるだけではなく、「パン」というキーワードをベースに「タテに深くヨコにつなげて分析」し、新しい社会環境の変化(革命)を見つけ出していくことが重要なのです。
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