例えば「観世水」という文様。これには「流れる水は腐らず」といわれ、止まることなく成長し続けるということから、成長や出世という意味が込められています。

 おなじみの「唐草文様」の果てしなく伸びていくツルは、どんどん成長し、長寿や商売繁盛の意味が込められています。

 英敬さんは「伝統文様は、個人的に面白いなぁ、と思って興味があったんです。それを、風呂敷に興味を持ってくれた若い人に同じように興味を持ってもらえたら」と言います。

 さらに、兄・英敬さんがデザインした柄の色合いを最終調整するのは、弟の康之さん。アパレル店員の経験がある康之さんのセンスが掛札独特の色合いを生んでいます。実は、この伝統文様をモチーフにしたデザインが、お店の活況に大いに役立っているのです。そう、「このデザインには、こういう意味が込められていて~」とお客様に商品を紹介するとき、かなり興味を持ってくださるそうです。確かに、伝統文様に込められた意味を理解して使うと、より親しみが湧きますもんね。

【メソッド2】( 伝統文様 )をアレンジし日本の文化を伝える

 最後はメソッド3です。

【メソッド3】(???)を伝える店づくり

 さらに、柄だけではなく、掛札の風呂敷はディスプレーの仕方にも特徴があります。

 それは、風呂敷をすべてカバンの形にして並べているのです。

風呂敷をカバンの形にしてお客さんに見てもらう

 三代目・康之さんは「商品を平置きで見てもらうというよりは、どの柄が似合うのかを鏡で合わせてもらいたいんです」と、カバンの形でバッグを持つようにお客さんに手にしてもらうことで、洋服に合うかどうか、実際に使うイメージがつかみやすいんだそうです。もう、この時点で既に我々の風呂敷の使い方の概念が覆されていますよね。

 お店に入ると目を引くのが、横幅8m70㎝、縦75cmという大きなカウンターです。

「ここが一番のポイントです!」と目を輝かせる康之さん。「ご購入いただいたお客様に包み方、使い方をしっかり知っていただけるよう大きなカウンターを作りました」。

何より、気軽に使ってもらえるものを

 何より、一番の思いは、風呂敷を気軽に使ってもらうこと。購入したお客さんが生活の中で使えるよう、包み方を教えているんです。ご承知の通り、風呂敷は広げるとかなり大きなもの。このサイズだと、カウンターから風呂敷がはみ出すことなく使うことができます。時間がないお客さんや、プレゼント用には、無料でしおりを付けているという徹底ぶり。お客様の中には、動画を撮る方や、包んでもらいたい物を持ってくるお客さんまでいらっしゃるそうです。その中身は、ワインボトルから大きなぬいぐるみまで。サイズさえ合えば、風呂敷に包めないものはありません。あっという間に、オシャレな包みになるので、この魅力に虜になる方の気持ちが分かります。

 お客さんから多く寄せられた要望に応えて、今年新たに商品化したものが、サイズを今までの4分の1にした風呂敷。使ってみたいけど、大きいのは使いこなす自信がない……という方に向けて作りました。これだと、お弁当を包んだり、ハンカチ代わりにしたり、タペストリーとして飾ってもオシャレ! 既成の概念にとらわれず、京都掛札の風呂敷は進化していきます。

 近年の風呂敷ブームの先駆けともなった京都掛札ですが、全国からお客さんが来るのに対し、店舗はここ東山のお店だけ。

 康之さんは「接客を含めて商品だと思っています。店舗を広げると目の行き届かないところが出てくるかもしれませんし」と話します。今まで何度も店舗を増やすオファーがあったそうですが、「目の行き届く範囲でお客さんとコミュニケーションを持ちたい」と、京都の一店だけと決めているそうです。むしろ、それが「ここでしか買えない!」という希少価値を生んでいるんでしょうね。

【メソッド3】( 風呂敷文化 )を伝える店づくり