昆布漁の最盛期は7月。天然真昆布の漁は「マッカ」と呼ばれる長い竿を昆布の根元に突き刺し、傷つけないように、巻き取りながら引き上げます。その漁には神宗の小山鐘平社長自ら立ち会われるのです。小山社長は塩昆布の元となる昆布の出来具合を漁師さんと一緒に丁寧に確認、チェックに余念がありません。尾嵜会長のお話される素材の自信はここからスタートしているんでしょうね。

 そして、採った昆布は、その日のうちに乾燥させないといけません。そして現地で塩昆布用に裁断され大阪の工場に運ばれます。ここでも金属探知機などを使って入念に異物の混入をチェックしますが、神宗ではここからさらに、業界でも類を見ないX線を使った品質チェックを行うのです。いやはや、徹底した品質管理です。

 

 塩昆布の美味しさを追求するためには、上質の昆布を使うばかりではありません。まずは北海道産の天然真昆布と鰹本枯節、瀬戸内産のいわしを使ってしっかりと出汁をとります。この出汁で何をするのかというと、なんと昆布を炊くのです。昆布の美味しさを極限まで引き出す究極の方法は、昆布だしを使って昆布を炊くというこだわりでした。昆布に昆布ですか! 想像もつきませんでした。

水はノルウェーから運んだ超軟水

 こだわるのは、昆布だけではありません。鍋に入れる水にも秘密が隠されています。実は2000年に神宗は、塩昆布を炊くときに使う水を切り替えました。それが5000年の時をかけて氷河が溶けだした天然水、ノルウェーのオルデダーレン峡谷で採取した「オルデン」という水です。この水こそ昆布のダシをとるのに最適な「軟水を超える高純度の超軟水」なのだそうです。一般的にミネラルを多く含む硬水に比べて、軟水の方が昆布だしに適しているといわれていますが、その理由は水に含まれるミネラル分にあります。ミネラル分が多いと、そのミネラルが昆布の細胞壁を固くし、うまみ成分が外に出にくくなってしまうのです。WHO(世界保健機構)のガイドラインの数値では、硬度60以下の水は軟水とされていますが、この「オルデン」は、なんと60をはるかに下回る硬度14! まさに超軟水。これを一度も外気に触れさせることなく日本へ運び、この水を使って天然素材の旨みを最大限に引き出すのです。ここまで徹底的に素材にこだわって、老舗の味を守り継いで作られているのが「神宗の塩昆布」なのです。

【メソッド1】老舗の味を守るため( 新しいチャレンジ )を続ける

 次にメソッド2を見てみましょう。

【メソッド2】(???)を売ることで新たな顧客ニーズを生む

 素材にこだわり、高い品質の塩昆布を作り続けてきた神宗。知る人ぞ知る高級昆布店、神宗の名が関西中にとどろくようになったきっかけは、冒頭で紹介した徳用塩昆布でした。

 徳用塩昆布の材料は、高級塩昆布を作る際に出てくる端っこの部分。厚さや大きさは不揃いでも、美味しさには遜色がありません。ならば、「それを売ってしまおう!」そんな逆転の発想で発売されました。尾嵜会長は「お徳用を作ったらお客様に喜んでいただけるんじゃないかと思ったんです。さすがにご進物には使えませんが、お家で食べられるなら、私もお徳用がええと思いますよ(笑)」さすが大阪人の尾嵜会長。うれしい本音トークです。

徳用に使われる昆布。美味しさでは遜色はない
徳用に使われる昆布。美味しさでは遜色はない

 ただ、お徳用といえども、作り方にも手を抜きません。「進物用は昆布のサイズが同じなので炊き方は同じなんですが、徳用は昆布のサイズや厚みがバラバラですから、どの昆布に合わせて炊くのか、こちらのほうが気も遣うし、手間が掛かります」と工場長。そこまでこだわって、お徳用は作られました。

 これが大ブレイクしたのは、阪神百貨店へ出店した2001年ごろ。なんと当時、売り場面積あたりの売り上げが百貨店で日本一を記録しました。みなさん、信じられますか? 大阪名物の「塩昆布」が、並み居る大手海外ブランドを抜いて日本一ですよ。大阪人の昆布愛もさることながら、神宗の昆布の力、恐るべしです。尾嵜会長は「私も商売をしている以上、他社さんはこんなことできないでしょ、というのを見せたいんです!」。改めて自社の商品に対する絶対の自信と信念が伺えます。

 こうしてお徳用をきっかけに、今まで神宗のことを知らなかったお客様が「神宗の品質」を知ることになり、その結果、新たに多くの神宗ファンが生まれたのです。

【メソッド2】( お徳用 )を売ることで新たな顧客ニーズを生む

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