しかし、また時代の波が山本さんを襲いました。3度目の危機は、「充填豆腐ブーム」によってもたらされました。従来の豆腐はパッケージの四隅に水分が入った隙間がありました。しかし、充填豆腐には、その隙間がありません。

 これは、製造工程の違いなのです。充填豆腐は、凝固剤が混ぜられ冷えた豆乳を容器に充填し密閉。それを容器ごと加熱して固めて豆腐にする製法なのです。この作り方だと、これまで以上に柔らかくて舌触りがいい、滑らかな豆腐を作る事が可能になります。

次のピンチは柔らかい豆腐によってもたらされた

 「いやぁ、コレにはやられました。柔らかい究極の豆腐を作られてしまいました。職人として、負けた、と思いましたよ」と、振り返る山本さん。

 ……一体何度ピンチが訪れるのでしょうか?しかし、ピンチでも相変わらず笑顔の山本さんの職人魂に、また火がつきました。そう、人気の「充填豆腐」を研究し尽くしたのです。その結果、山本さんは「充填豆腐」がこれまでの豆腐と違い大豆の味に「えぐみが少ない」ことに気付きました。

 確かに、とようけ屋山本の豆腐は、大豆を皮ごとすり潰して豆腐を作っていました。対して充填豆腐は、大豆の皮をめくり、中心部分だけで豆腐を作っている事を突き止めたのです。この製法は、多くの大豆を使うため、コストが掛かりますが、えぐみやアクがない豆腐を作ることができるのです。

 そこで、山本さんは店で扱っている全ての大豆の皮をめくり、中心部分だけを使って豆腐を作りました。その結果、これまでの豆腐より、柔らかく、香りの良い、美味しい豆腐がお店に並びました。いやはや、凄まじい執念です。山本さんは、良い物は素直に取り入れる柔軟な発想こそが、伝統を守る最大の秘訣だと導き出したのです。

【メソッド3】( 良いもの )は素直に認める柔軟な( 発想 )

最後は、メソッド4です。

【メソッド4】味を守り続けるために(???)ない

 とにかくアイデアが豊富で、革新を止めない山本さん。一方で、1897年の創業当時から119年間まったく同じ作り方で、守り抜いているものがあります。それが「揚げ豆腐」です。職人が丁寧に手作業で揚げています。機械化をすれば簡単なのですが、創業当時と同じ、1つひとつ手間暇かけて揚げる製法を守り続けています。

揚げ豆腐は創業以来、手作業で揚げている

 実は筆者もこの揚げ豆腐が大好きなひとり。ふわふわとした食感と揚げ豆腐ならではの香ばしさと甘み。一度食べたら、もう戻れない美味しさは、これからの季節、お鍋の具材にも欠かせない一品です。「作り方を変えると食感が変わるし、材料を変えると味が変わります。自分が食べて美味しいことが全てです」と、山本さんは笑顔で話します。

【メソッド4】味を守り続けるために( 手間を惜しま )ない